硬骨魚綱シャチブリ目シャチブリ科に属する海水魚。熊野灘(くまのなだ)、沖縄県久米島(くめじま)近海に分布する。体はいくぶん伸長し、よく側扁(そくへん)し、腹部で丸い。頭はわずかに側扁し、吻(ふん)はややとがる。目は小さく、上顎(じょうがく)後端の上方に位置する。口は吻端のすこし下面で水平に開き、下顎前端より突出する。上顎の後端は瞳孔(どうこう)の後縁の下方に達する。上下両顎や口腔(こうこう)内に歯がない。鰓耙(さいは)は上枝に5~6本、下枝に17~18本で、細長くて、前方に向かってだんだんと短くなる。最長鰓耙長は鰓葉長におよそ等しい。鱗(うろこ)と側線はない。背びれは胸びれの上方にあり、基底(付け根の部分)は著しく短く、先端はとがる。臀(しり)びれは尾びれと合流し、丸い葉状部を形成する。胸びれはとがる。腹びれは10~11軟条で、胸びれの基底のやや後方にあり、前の3軟条は太くて鰭膜(きまく)でつながらず、ほかの軟条から遊離する。第1軟条は棒状で、先端部が槍(やり)形となっており、その長さは体長の31.4~32.2%。第2軟条は扁平で糸状に伸び、同12.8~13.6%。第3軟条はやや扁平で、第1軟条より小さい槍形であり、同17.9~18.9%となっている。低いゼラチン質の脂(あぶら)びれ(背びれの後方にある1個の肉質の小さいひれ)が背びれの後方から尾びれの基底の間にある。体は淡桃色で、赤色から暗褐色の、形と大きさがさまざまな多くの豹紋の斑紋(はんもん)で覆われる。背びれの下半分は赤褐色で、上半分は黒い。胸びれは赤褐色で、先端部は黒い。腹びれの遊離軟条は白色で、ほかの軟条は黒い。
本種はこれまでに3個体が報告されている。1個体は水深320~350メートルからトロール網で漁獲され、ほかの2個体は水深612メートルから海水といっしょに吸い上げられた。本種は魚類研究者の瀬能宏(せのうひろし)(1958― )らによって2008年(平成20)に新種として報告されたが、従来、日本から報告されていたシャチブリ科魚類とは体形、色斑、腹びれなどがまったく違った特異な特徴をもっている。