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薬局
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薬剤師が販売または授与の目的で調剤などを行う場所(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」昭和35年法律第145号。2条12項。以下、薬機法という)。なお、病院や診療所内に設けられた薬剤の調剤所は含まれない。

 現在ではほとんどの薬局は病院や診療所から独立して存在している。この物理的に独立した薬局という存在は、薬剤師の専門性の確立の象徴ともいえるものである。薬剤の処方は、もともと漢方がおもな治療手段であったころは医師自身が種々の生薬を調合して処方しており、これが医師(くすし、薬師)の役割であった。近代に入っても長らく医師の報酬も薬代に多くの部分を依存していたために、調剤業務も病院内、診療所内で行う状態が長く続いていた。院内処方という形態は患者にとっても利便性が高い仕組みにみえるが、処方と調剤機能の分離が確立しないことで、処方内容の適切性や安全性へのチェック機能が働かない弊害の大きいことが問題視された。このため診療報酬および調剤報酬において院外処方推進の方向で経済的インセンティブ(動機付け)が設定され、急激に院外処方が普及した。このことによって、医師、薬剤師双方が、薬という「もの」を処方することで生業を成立させてきた時代が終わり、医師、薬剤師双方の知識・技術に対する適正な報酬を得る仕組みが確立された。こうして、病院において診療と処方箋(せん)が発行され、薬局において調剤が行われる現在の形が確立された。

 薬局の開設には、薬機法に定められた一定の基準を満たし、かつ、都道府県知事(その所在地が保健所設置市または特別区においては市長または区長)等からの許可を得る必要がある。薬機法に定められた基準には、薬剤師を置くこと、開設者は欠格事由に該当しないこと(麻薬等の中毒者でないことなど)、適切に調剤を行う設備、医薬品の保管設備、衛生的な環境が確保されており、さらには法令遵守の必要性から、薬事に関する業務に責任を有する役員(責任役員)を置くことが定められている。

 病院・診療所から独立して調剤を行う場となった薬局だが、その果たすべき役割はますます多様化し重要度が増している。2015年(平成27)に厚生労働省から発表された薬局の将来像(「患者のための薬局ビジョン」。以下、薬局ビジョン)には薬局が果たすべき役割が明確に示されており、この薬局ビジョンのなかで、「かかりつけ薬局」の概念や、そのもつべき機能も明確に示されている。

 薬局ビジョンが発表された翌年の2016年4月の調剤報酬改定において、「かかりつけ薬局」制度が開始され、一定の資格を有する薬剤師を置き、患者から特定の薬剤師がかかりつけとして指名されることなどの要件を満たしたうえで届出を行うことで、かかりつけ薬剤師指導料を算定することが可能となった。かかりつけ薬局は、かかりつけ患者の服薬情報の一元的把握、薬剤管理・指導を担い、24時間対応や在宅対応が可能で、かかりつけ医をはじめとした医療機関との連携機能を果たすべきとされている。かかりつけ薬局機能に加えて健康相談や健康維持・増進の相談対応、介護相談などの機能を充実させた薬局を「健康サポート薬局」として都道府県知事に届出を行う仕組みも同時に導入された。

 さらに2019年(令和1)11月の薬機法改正(2021年8月施行)により、地域連携機能を充実させた薬局を「地域連携薬局」として、また専門医療機関との連携機能を高めた薬局を「専門医療機関連携薬局」として、都道府県知事が認定する仕組み(1年ごとの更新制)が設けられている。

 また、2024年9月には厚生労働省の「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」での意見のまとめとして「地域における薬局・薬剤師のあり方」が公表されているが、2015年の薬局ビジョンをさらに推進、発展させた方向性が示されており、連携相手として医療機関に加えて、訪問看護、介護、介護老人健康施設(老健施設)との連携の推進や、OTC薬(処方箋なしで購入できる医薬品)使用の推進、さらには「災害・新興感染症等有事の対応」も担うべきとの意見が明記されている。

 これからの日本は高齢化がますます進行する状況で若年就労者人口の減少が見込まれるため、医療介護機能を維持する対策が待ったなしの状況にある。地域の医療・介護の連携や医療DX(デジタルトランスフォーメーションDigital Transformation、デジタル改革)による効率化の推進は必須(ひっす)(2024年12月社会保障審議会医療部会による「2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革に関する意見」)であり、薬局機能の拡充はこの流れと軌を一とするものといえる。

[辻 典明]2025年9月17日

©SHOGAKUKAN Inc.

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