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日本大百科全書(ニッポニカ)

ガソリンエンジン

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ガソリンエンジン
がそりんえんじん
gasoline engine

ガソリンを燃料に用いた火花点火方式の往復動内燃機関。エンジン内の吸入(吸気)、圧縮、燃焼(膨張)、排気のサイクルを動作する方式により2行程機関と4行程機関に大別される。

[飯島晃良]2026年2月13日

歴史

4行程機関は2回転に1回燃焼してサイクル(1周期)を完結するもので、1862年にフランスのボー・ド・ロシャAlphonse Beau de Rochas(1815―1893)が原理を提唱し、1876年ドイツのニコラウス・アウグスト・オットーがガス燃料を用いて実用化に成功した。2行程機関は1回転に1回燃焼してサイクルを完結するもので、1881年にイギリスのデュガルド・クラークDugald Clerk(1854―1932)が空気とガス燃料用の掃気ポンプを別にもつ形のものを実用化した。現在ガソリンエンジンで用いられる2行程機関は、クランク室に吸入した混合気をピストンの下降行程で圧縮し、圧縮された混合気でシリンダーを掃気(後述)するもので、1891年イギリスのジョセフ・デイJoseph Day(1855―1946)によって実用化されたガスエンジンを改良したものである。

 液体燃料で気化性の高いガソリンを燃料にする試みは、実用のガス機関をつくったフランスのジャン・ジョゼフ・エティエンヌ・ルノアールが最初で、燃料の自然蒸発で気化する表面気化器を用い、ガス機関をガソリンで運転した。その後いくつか試みられたが、ガソリンはガス燃料の供給が困難な場合の代替燃料として使用され、機関も据え付け型であった。

 1883年ドイツのゴットリープ・ダイムラーは小型・軽量の実用4行程ガソリンエンジンを開発した。吸入弁は自動弁で、排気弁は直接カム駆動の茸(きのこ)弁であった。点火は熱管型で、気化器は初め表面気化器であったが、すぐに霧吹き型になった。ダイムラーの機関は小型・軽量で、単位重量当りの出力も大きく車両用に適していた。そこでダイムラーは1885年自動二輪車を開発し、さらに自動車にもガソリンエンジンを用いた。また同じころドイツのカール・ベンツは電気火花点火の4行程ガソリンエンジンを開発し、初めから自動三輪車に用いた。その後、ガソリンエンジンはフランスで発展し、高圧電気火花点火方式が採用され、小型・軽量・高速の自動車用機関として発達した。19世紀末から20世紀の初めにかけて、機関の多気筒化、カム軸駆動の吸排気弁にそれぞれカム軸をもつ頭上カム軸方式(OHC)、一つのシリンダーに吸排気弁を二つずつもつ四弁式などがつくられ、1930年代には現在のガソリンエンジンの機構はほとんどすべて開発された。その後、細部の研究による改良と新しい材料の開発、制御方法の進歩によって熱効率向上や小型・軽量化を続けており、1970年ごろから排気清浄化の研究が進められて、20世紀末ごろにはいずれもがほぼ達成された。さらに地球温暖化対策のため、CO2排出量低減に向かって研究開発が進められている。なお、2行程機関では吸排気管内の気体の振動が出力に大きな影響を与え、掃気流の研究とともに大幅な出力向上をみたのは1950年代以降である。しかし、排気浄化が困難であり、1970年以降小型のエンジンを除き使用されなくなった。

[吉田正武][飯島晃良]2026年2月13日

基本構造と動作原理

(1)往復動作をするための基本構造
ガソリンエンジンは、往復動内燃機関の一種である。往復動作をするため基本構造は、ピストンと、ピストンの往復運動を回転運動に変換するためのクランク軸である。ピストンとクランク軸はコネクティングロッド(連接棒。略してコンロッドともいう)で接続される。ピストンはシリンダー内で往復運動をする。シリンダーの上端部にシリンダーヘッドが取り付けられ、ピストン、シリンダー、シリンダーヘッドにより閉じられた空間がシリンダー内の容積になる。とくに、ピストンの移動でシリンダー内の容積がもっとも小さくなった場合の容積を燃焼室容積といい、これはすきま容積ともよばれる。このときのピストン位置を上死点という。逆に、シリンダー内容積が最大になる場合のピストン位置を下死点という。ピストンが下死点から上死点に移動する際に変化する容積を行程容積または排気量という。たとえば、排気量2000立方センチメートルのガソリンエンジンは、1ストローク(1行程)でのシリンダー内の容積変化の合計が2000立方センチメートルである。また、ピストンが下死点にある場合のシリンダー内容積を、すきま容積(シリンダー内の最小容積)で割ったものは圧縮比とよばれ、内燃機関の熱効率などの性能に影響を及ぼす重要な指標の一つである。

(2)動作の基本
ピストンが上死点から下死点、あるいは下死点から上死点に移動する距離を行程(ストローク)とよぶ。4行程機関は四つのストロークで一つのサイクルが完了する。つまり、ピストンがシリンダー内を1往復するとピストンは2ストローク分運動し、その際にクランク軸が1回転(360°回転)する。したがって、4行程機関では4ストローク、つまりクランク軸2回転で1サイクルを形成し、元の状態に戻る。4行程機関は、4ストローク機関あるいは4サイクル機関とよばれる。

 2行程機関は二つのストローク、すなわちクランク軸1回転で1サイクルを形成する。2ストローク機関、2サイクル機関ともよばれる。

 4ストロークガソリン機関は次の四つの行程で動作をする。

①吸気行程(上死点から下死点への移動) 吸気弁を開いてピストンが下死点に向かって移動しながら燃料と空気の混合気などの作動ガスをシリンダー内に吸入する(後述するように、空気のみを吸入して後から燃料を供給するタイプのガソリンエンジンも存在する)。

②圧縮行程(下死点から上死点への移動) 吸気弁を閉じて作動ガスを圧縮する。圧縮により高温・高圧になった混合気に対して、圧縮の上死点付近(上死点よりも少し前)で火花放電により点火する。その結果、ガソリンと空気の混合気が急速に燃焼して燃焼室内が高温・高圧になる。

③膨張行程(上死点から下死点への移動) 燃焼により高温・高圧になった作動ガスが膨張し、ピストンに仕事を与える。これがコンロッドを介してクランク軸の回転運動に変換される。

④排気行程(下死点から上死点への移動) 排気弁を開いてピストンが上死点に向かって移動しながら、膨張後のシリンダー内のガスをエンジン外に排出する。

 2ストロークガソリン機関は次のようにクランク軸1回転で動作をする。

①下死点付近では掃気ポートと排気ポートがともに開いており、そこから混合気の吸入と燃焼ガスの排気を同時に行っており、これを掃気とよぶ。その後、ピストンの上昇とともに掃気ポートおよび排気ポートが閉じ、実際の圧縮が行われる。圧縮の上死点付近で4ストロークガソリン機関と同じように火花放電により点火し、燃焼を行う。

②燃焼ガスの膨張によりピストンに仕事を与える。膨張の後半になると排気ポートおよび掃気ポートが開き、排気の排出と混合気の吸入が始まる。

[飯島晃良]2026年2月13日

ガソリンエンジンの技術

ガソリンエンジンの動作の基本は、混合気の吸入、適正な燃焼、排気である。そのため、空気をうまく吸入する技術、燃料を供給して混合気を形成する技術、適正なタイミングで確実に点火する技術、混合気を適切に燃焼させてできるだけクリーンな燃焼ガス成分にする技術、燃焼ガスの後処理によってさらに排出ガスをクリーンにする技術などが必要になる。

 出力を増やすには混合気の吸入量、とくに空気の吸入能力を増やすことが重要である。そのため、吸気弁の数を増やす多弁化などの吸気系の改良が進んだ。現在では、吸気弁の開閉時期や弁のリフト量(吸気バルブや排気バルブが、閉じている状態から最大に開いたときまでの移動距離)などを油圧や電子制御で可変化できるシステムも多く利用されている。

 燃焼室に適正な混合気を形成するために、燃料供給系の改良が進んだ。ベンチュリー管とよばれる絞り流路での吸気の流速変化を利用し、霧吹きの原理で燃料と空気を混合させる気化器(キャブレター)方式にかわり、現在ではインジェクターとよばれる燃料噴射弁を電子制御で駆動して燃料を供給する電子制御燃料噴射システムが広く用いられている。また、燃料を吸気管ではなくシリンダー内に直接噴射する筒内直接燃料噴射(直噴)方式も自動車用を中心に広く採用されている。直噴ガソリンエンジンは、燃料と空気を完全に混ぜずに意図的に成層化して希薄燃焼(より空気の割合が高い混合気で燃焼させること)を実現したり、運転条件に応じてさまざまな燃料噴射パターンを使い分けることで性能の向上が図られている。適正な燃焼を実現するためには、最適な時期での火花放電や燃焼室内の混合気流動が重要になる。自動車用のガソリンエンジンなどでは、火花放電のタイミングは、電子制御により可変化されており、運転条件に応じて適正に制御されている。また、混合気の燃焼を促進するために、吸気管の形状や燃焼室の形状についても、燃焼室内に十分なガス流動が生じるように設計されている。

 自動車用ガソリンエンジンの多くは、三元触媒システムを用いて燃焼ガス中の有害成分である未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)の3成分(三元触媒)を同時に、かつ非常に高い性能で浄化している。三元触媒が適正に作動するためには、燃焼室内に供給される混合気は理論空燃比(燃料と空気中の酸素が過不足なく反応する比率)に調整されている必要がある。そのため、前述の燃料噴射システムと、排気管の空燃比検出に基づく精緻(せいち)な電子制御燃料噴射制御によって、要求された混合比に制御しながら排ガスのクリーン化を実現している。

 また、ガソリンエンジンは多くのハイブリッドシステムに搭載されている。ハイブリッドシステムでは、エンジンを一定負荷で高効率に運転することが要求されるなど、従来のガソリンエンジンとは異なる性能が求められるため、ハイブリッドシステムなどの電動パワートレインに特化したガソリンエンジンの開発も進んでいる。

 そのほか、これまでのガソリンに加えて、エタノールなどのバイオ燃料、水素H2、二酸化炭素CO2と再生可能エネルギーから製造された水素を使って合成される炭化水素燃料(e-fuel)など、今後は地球環境にやさしいさまざまな燃料を内燃機関で燃焼させる技術が求められる。ガソリンエンジンを基本として、それらの新しい燃料や燃焼の実現に向けた研究開発が進められている。

[飯島晃良]2026年2月13日

©SHOGAKUKAN Inc.

メディア

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