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日本大百科全書(ニッポニカ)

ディーゼルエンジン

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ディーゼルエンジン
でぃーぜるえんじん
Diesel engine

往復動内燃機関の一種。シリンダー内で高温・高圧に圧縮した空気中に軽油や重油などの自発着火性の高い燃料を噴射し、自発着火燃焼させることで動力を得る。圧縮着火機関(compression ignition engine)に分類される。

[堀部直人]2026年2月13日

歴史

ディーゼルエンジンは1893年にドイツの技術者ルドルフ・ディーゼルが考案し、1897年に最初の試作機が製作された。初期のディーゼルエンジンは側弁式で、高圧空気を用いて燃料をシリンダー内に噴射する空気噴射方式を採用していた。この方式は巨大なコンプレッサーを必要とし、エンジンが大型かつ重くなるため、高い熱効率をもつものの、用途は据え付け用などのごく一部に限られていた。

 1910年にイギリスのビッカース社のジェームズ・マッケニーJames Mckechnie(1856―1931)が高圧空気を使用せずに燃料のみを噴射する無気噴射ポンプ方式を船舶エンジン用に開発した。この方式はその後改良が進み、1927年にはドイツのロバート・ボッシュ社によって列型噴射ポンプが開発され、エンジンの小型化が進み信頼性も飛躍的に向上する。このタイプの噴射ポンプは長く採用され続けた。さらに、1995年(平成7)に日本電装(現、デンソー)がコモンレール式電子制御燃料噴射装置を実用化した。これにより、燃料噴射圧力、噴射時期、噴射量の自由かつ精密な制御ができるようになり、ディーゼルエンジンの性能向上と排ガス浄化が大きく前進する。その後、ディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)などの後処理装置と組み合わせることで、排ガス浄化が図られた「クリーンディーゼル」が普及した。

[堀部直人]2026年2月13日

構造

基本構造はガソリンエンジンなど他の往復動内燃機関と共通であり、シリンダー、シリンダーヘッド、ピストン、クランク軸、コネクティングロッド(連接棒。略してコンロッドともいう)、カム軸、吸排気弁機構、はずみ車(フライホイール)などからなる。一方、ガソリンエンジンと異なり、基本的に吸気絞り弁はなく、つねにシリンダー内に十分に空気のみを吸入する。圧縮比は16から20程度のものが多い。圧縮した空気の温度は500~700℃になり、そこに燃料を噴射して自発着火燃焼させる。出力は燃料噴射量で調整する。近年では、排気清浄化や熱効率と出力の向上のために過給装置(おもにターボチャージャー)を組み合わせたディーゼルエンジンが多い。

 燃料供給装置は、燃料フィルター、燃料噴射ポンプ、燃料噴射弁からなる。小型汎用機の多くは燃料噴射ポンプと燃料噴射弁の間を高圧用の燃料噴射管でつなぎ、ポンプのプランジャーをカムで駆動し、噴射弁は所定圧力になると、ばねに打ち勝って開く自動弁を用いる。ポンプは、シリンダー数だけプランジャーのある列型と、少数のプランジャーから圧縮された燃料を分配器で各シリンダーの噴射弁に供給する分配型がある。また、ポンプと噴射弁が一体になり、カムで駆動される一体型噴射装置もあり、高い噴射圧力を可能にしている。厳しい排ガス規制に対応した自動車や農業機械、建設機械向けのエンジンでは、排気浄化と熱効率向上のために、噴射を高精度かつ自由に制御できるコンピュータ制御の噴射装置が主流になっている。この装置では高圧の燃料供給ポンプから全シリンダーに共通の燃料パイプ(コモンレールという)に燃料が送られ、各シリンダーの電子制御式噴射弁から、コンピュータで指示された量の燃料が指示された時期とパターンで噴射される。

 燃料は燃焼室に噴射される。燃焼室がシリンダー、シリンダーヘッド、ピストン頂部に囲まれた単室式機関の場合、直接噴射式といわれる。また、燃焼室が前記燃焼室に加えて、連絡口でつながっているシリンダーヘッド内の燃焼室(副室という)からなる副室式では、燃料は副室に噴射される。これを間接噴射式という。現在では排気清浄化と熱効率向上のために直接噴射式が主流になっている。

 潤滑装置は、ピストンとシリンダーの間、各部のベアリングなどに潤滑油を送るもので、油ポンプ、油フィルター、油溜(あぶらだめ)からなる。とくに過給装置を用いるディーゼルエンジンではピストンの冷却にも潤滑油が用いられ、ピストンの裏面にオイルの噴流(オイルジェット)を衝突させて冷却を行う。冷却装置は、多くの水冷式の場合は水循環ポンプ、ラジエーター(空気冷却のものと水冷のものがある)、温度調整器からなり、大型船舶用ディーゼルエンジンでは海水で直接冷却する場合がある。始動時のシリンダーやシリンダーヘッドが低温で圧縮温度が低くなり、燃料の良好な着火・燃焼が得られない場合の補助熱源として、グロープラグ(予熱栓)や吸気ヒーターをもつ機関が小型機関に多い。大型の機関で、とくに流動性の低い重油を用いる機関では燃料の予熱装置を用いる。

[堀部直人]2026年2月13日

種類と用途

現在のディーゼルエンジンには4ストローク式と2ストローク式がある。20世紀なかばまではシリンダーの上部と下部、すなわちピストンの上下両側に燃焼室をもつ複動式機関も存在したが、現在では構造の複雑さや信頼性などの問題からほぼすべてが単動式機関である。自動車用、耕うん機など農業用の小型機関では4ストロークの比較的高速の機関が多い。大型バス、トラック用もほとんどが4ストロークである。船舶用の高速機関(毎分1000回転以上)および中速機関(毎分400~1000回転)でもほとんどが4ストロークである。低速機関(毎分400回転以下)では4ストローク機関と2ストローク機関がともに使用されるが、大型の船舶用エンジンはほとんどが2ストローク機関である。大型の機関では出力は1シリンダーで5700キロワット程度に達し、14シリンダーで最大8万キロワットに達するものもある。

[堀部直人]2026年2月13日

特徴

ディーゼルエンジンは、高い燃焼圧力に耐えられるように強くつくられるので重くなるが、ガソリンより低質の燃料が使用でき、熱効率が高く、燃料消費量が少ないので運転経費が安い。また、ガソリンエンジンでは困難であるシリンダー当りの高出力化が可能であり、結果としてエンジンの高出力化ができる。したがって、単位重量当りの出力がとくに要求される場合を除いて、船やトラックなどの輸送分野で広く用いられている。また、熱効率が高く、仕事当りのCO2排出量が少ないので、排気清浄化とCO2対策で乗用車用エンジンとして高圧過給、排気再循環、排気処理などを組み合わせた新しいディーゼルエンジン(クリーンディーゼル)が、21世紀初めごろから広く使用されるようになった。ディーゼルエンジンは化石燃料だけでなく、バイオ燃料や合成燃料などの多様な燃料に対応可能なエンジンである。

[堀部直人]2026年2月13日

©SHOGAKUKAN Inc.

メディア

ディーゼルエンジンの構造(2ストローク式低速機関)

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