機関内部で作動流体(通常は空気)を圧縮し、燃料と混合して燃焼させることで高温・高圧のガスを得てタービンを駆動し、動力を取り出す熱機関。一般には、燃焼が機関内部で行われる内燃式が多いが、作動流体を外部から間接的に加熱する外燃式ガスタービンも存在する。
ガスタービンと類似する熱機関の起源は、紀元1世紀のアレクサンドリアのヘロンが設計した「蒸気球aeolipile」にさかのぼる。これは、球体の側面から蒸気を噴出させて自ら回転する装置であり、推進力を生むという点では原始的なタービンとみなすことができるが、動力を得るものではなかった。16世紀には、レオナルド・ダ・ビンチが暖炉からの上昇気流を利用した「ダ・ビンチのチムニー・ジャック」(回転式ロースター)を考案し、熱を回転運動に転換する発想を提示した。ただし、ガスタービンに不可欠な圧縮・燃焼・膨張の三つの工程は備えていなかった。
ガスタービンの基本的な構成を初めて明確に示したのは、1791年にイギリスのジョン・バーバーJohn Barber(1734―1801)が取得したイギリス特許である。この設計では、石炭ガスと圧縮空気を混合して燃焼させ、発生した高温ガスをタービンに導いて動力を得るという、現代のガスタービンと本質的に同様の構成がとられていた。実際に装置は製作されなかったが、後世に大きな影響を与えた。1853年にはフランスのトゥルネールLouis Marcellin Tournaire(1824―1886)が多段タービンを構想し、1861年にはメノンMarc Antoine François Mennons(?―1889)が、固体燃料を用いた燃焼器、遠心圧縮機、ラジアルタービン、逆流式熱交換器を備えた設計でイギリス特許を取得したが、いずれも試作には至らなかった。
ガスタービンの実機設計としての最初の試みは、1872年にドイツのフランツ・シュトルツェFranz Stolze(1836―1910)が取得した特許による。彼は軸流圧縮機、多段タービン、燃焼器を組み合わせ、1900年に試運転を行ったが、圧縮機の効率が低く、高温ガスに耐えるタービン材料も未成熟であったため、実用的な出力は得られなかった。1930年代に入ると、流体力学や耐熱材料の技術の進展により、スイスのヌーシャテルにおいてブラウン・ボベリ社が世界初の実用ガスタービン発電所を完成させた。この装置はタービン出力1万5400キロワット、発電出力4000キロワット、熱効率18%を達成し、戦前期におけるガスタービン技術の集大成とされる。
その後、航空機用ジェットエンジンの開発が急速に進み、1939年にはドイツの「ハインケルHe178」が世界初のターボジェット推進による飛行に成功し、続く1941年にはイギリスの「グロスターE.28/39」が飛行に成功した。
以降、ガスタービンは航空、発電、産業の各分野において広く応用されるようになり、1960年代以降はガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電が普及した。21世紀には、熱効率60%を超える高性能システムも実現している。さらに近年では、水素燃焼対応技術、セラミックス材料の応用、超音速推進や電動化との統合など、脱炭素社会の実現に向けた次世代ガスタービンの研究開発が、世界各国で行われている。
内燃式ガスタービンは、圧縮機、燃焼器、タービンを主要な構成装置とし、これらに加えて、熱交換器(再生器、再熱器)、補機類(アクチュエーター、潤滑油系、燃料供給系、始動装置など)から構成される。吸入した空気を圧縮機で高圧にし、燃焼器で燃料と混合・燃焼させて高温・高圧の燃焼ガスを生成し、タービンを駆動する。圧縮機とタービンは同一軸で連結されており、その回転力の一部は圧縮機の駆動に、残りは発電や推力などの外部出力に利用される。
圧縮機は吸入空気を固定翼(ステーター)および回転翼(ローター)によって昇圧する装置である。固定翼と回転翼をあわせて一つの段(ステージ)とするが、1段のものと複数段のものがあり、さらに軸流式と遠心式に大別される。軸流式は大流量に適しており、おもに中~大出力用に用いられる。一方、遠心式は1段あたりの圧力上昇が大きく、主として小型機に用いられる。燃焼器は、缶型、環状缶型、環状型があり、産業用では整備性に優れる缶型が、航空用ではコンパクトな環状型が用いられることが多い。タービンは燃焼ガスのエネルギーを回転力に変換する装置で、圧縮機と同様に固定翼と回転翼で構成される。タービン翼は約1600℃レベルの高温にさらされるため、耐熱材料を用い、冷却通路が設けられたり耐熱コーティング(TBC:Thermal Barrier Coating)などが施されている。
軸構成は、単軸型、2軸型、3軸型に分類される。単軸型は構造が簡潔だが起動性や制御に制約がある。2軸型は高圧軸と低圧軸が独立しており、応答性に優れる。さらに、大型航空エンジンのなかには高圧・中圧・低圧の3軸構成を採用しているものもある。また、タービン排気の熱で圧縮後の空気を温める再生器や、膨張途中で再加熱を行う再熱器の導入により、熱効率向上が図られている。
外燃式ガスタービンは、燃焼器のかわりに外部熱源によって作動流体を加熱し、タービンを駆動する方式である。使用する熱源の自由度が高く、外部の燃焼炉、核熱、太陽熱、地熱など多様な熱源に対応可能である。また、燃焼ガスがタービン内部に直接流入しないため、タービン翼の腐食や侵食のリスクが低減され、装置の長寿命化や保守性の向上が図られる。
ガスタービンは、ピストンを用いるレシプロエンジンに比べて構造が簡素で振動が少なく、高回転・高出力に適する。一方で、運転条件による効率の変動が大きく、加減速を伴う自動車用途では効率が低下する傾向がある。
ガスタービンは高出力・軽量といった特性を生かして、幅広い分野に応用されている。航空用ガスタービン(ジェットエンジン)において、民間機にはバイパス比(ファンで圧縮された空気のうちエンジン内部を通らず外側を流れる空気の量とエンジン内部の燃焼器に送られる量の比率)の高いターボファンエンジンが搭載され、軽量化、燃費性能、静音性などが重視される。一方、軍用機にはアフターバーナー(再燃器)付きの低バイパス比のターボファンエンジンが用いられ、高速飛行や高加速に対応している。
火力発電用ガスタービンは、蒸気タービンと組み合わせたコンバインドサイクル発電により、発電効率が60%を超えるものもある。その他、産業施設内での分散電源や非常用電源として小型のガスタービンが導入されている。
船舶用途としては、部分負荷時(最大出力より出力を抑えた運転状態)における燃費の悪さから、民間船舶への本格的な導入は限定的である。一方、艦艇用エンジンとしては、高出力密度や低騒音といった特性を生かし、ガスタービンが使用されている。また、蒸気タービンやディーゼルエンジンと組み合わせた複合推進方式もとられている。
自動車用ガスタービンは、おもに1960年代から1990年代にかけて世界各国で開発が進められ、日本でも自動車用セラミックスガスタービンの研究が進められたが、部分負荷時の効率の低さやアクセルを踏んだときの応答性の遅さなどから本格的な実用化には至っていない。
ガスタービンは、太陽光や風力などの自然エネルギーの導入拡大に伴い、夜間や悪天候時における電力系統の安定化を担う重要な電源として期待されている。従来の高効率化・高温化に加え、起動時間の短縮や出力変化速度の向上といった高機動化に向けた技術開発も進められている。さらに今後は、水素やアンモニアといった脱炭素燃料への対応が進み、CCUS(CO2の回収・利用・貯留)と組み合わせたゼロエミッション型ガスタービンの研究開発が推進されていく見込みである。
また、分散型電源(消費地近くで小規模に発電する方式)や、マイクログリッド(地域単位で発電・蓄電・消費を自給自足で行う小規模な電力ネットワーク)への適用によって、災害時の電力供給の確保や、電力インフラが未整備な地域への展開が考えられる。
航空分野においても、環境性能と実用性の両立に向けて、超高バイパス比ターボファンエンジンの開発やSAF(サフ)(Sustainable Aviation Fuel。持続可能な航空燃料)、水素燃料技術の研究開発などが進められている。