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日本大百科全書(ニッポニカ)

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ジェットエンジン
じぇっとえんじん
jet engine

機関内部に空気を取り入れて燃料と混合・燃焼させ、高温・高圧のガスをジェットとして後方に噴き出すことで、その反動によって推力を得るエンジン。一般に航空機に搭載されるが、飛行速度や用途に応じて動作原理の異なる複数の種類に分類される。ロケットとは異なり、外部から空気を取り入れて酸化剤として用いるため、空気のない宇宙空間では作動できない。

[佐藤哲也]2026年2月13日

歴史

現代的なジェットエンジンの開発は、1930年代に始まった。1930年、イギリスのフランク・ホイットルがターボジェットエンジンの基本構想を考案し、特許を取得した。一方、ドイツではハンス・フォン・オハインHans von Ohain(1911―1998)がハインケル社のもとでエンジンを開発し、1939年に世界初のジェット機「ハインケルHe178」が初飛行した。第二次世界大戦末期には、ドイツの航空機メーカー、メッサーシュミット社が開発したジェット戦闘機「Me262」が実戦配備された。戦後、ジェットエンジンの技術は各国で急速に発展し、1949年にはイギリスで世界初のジェット旅客機「デ・ハビランドDH106 コメット」が初飛行した。1950~1960年代にはアフターバーナー(再燃器)付きエンジンやターボファンエンジン(後述)が登場し、燃費の向上や騒音の低減が進み、1980年代以降はさらなる燃費向上や環境性能の改善が進められている。

[佐藤哲也]2026年2月13日

構造

ジェットエンジンの基本構造は、前方から順に、空気取入口(吸気)、ファン・圧縮機(圧縮)、燃焼器(燃焼)、タービン(膨張)、ノズル(排気)となっており、これらが連続的に運転される。空気取入口は、エンジンに取り込まれた空気を減速し、コアエンジン(圧縮機、燃焼器、タービン)などが効率よく作動できる状態にする役割がある。音速以下では空気の流れが比較的安定しているため、亜音速機の空気取入口は比較的シンプルな構造となっている。一方、超音速機では、音速を超えた空気を効率よく亜音速まで減速させる必要があるため、空気取入口の内部には、空気を段階的に減速させるための衝撃波を意図的に発生させる流路構造が設けられている。また、飛行速度の変化に対応するため、形状可変の空気取入口や、余分な空気を逃がすバイパスドアが用いられることもある。ターボファンエンジンでは大型のファンが配置され、取り込まれた空気のうち一部をコアエンジンに送り、残りをコアエンジン外側にバイパスさせて後方へ排出する構造となっている。圧縮機は、複数の回転翼(ローター)と静止翼(ステーター)から構成され、ローターで空気に仕事を与えて加速し、ステーターで整流しながら速度エネルギーを圧力に変換し、段階的に圧力を高める。燃焼器は、軽量で燃焼効率の高い環状型(アニュラ型)がおもに採用されているが、複数の筒状燃焼器を並べた缶型や、缶を環状に配置した環状缶型もあり、用途や機体サイズに応じて使い分けられる。内部には保炎器や冷却・希釈空気用の孔(あな)が設けられ、温度制御と燃焼安定性を実現する。タービンは圧縮機と同様にローターとステーターをあわせた段(ステージ)から構成され、燃焼ガスのエネルギーを効率よく機械的回転エネルギーに変換する。このエネルギーで、ファンと圧縮機を駆動し、残りのエネルギーを推進力とする。タービンはきわめて高温のガスにさらされるため、耐熱合金で冷却孔(こう)付き翼などが用いられる。ノズルは流れを加速するために、下流側にいくにつれ断面積が小さくなる先細ノズルが使用されるが、軍用機などでは細くなったあとに広がった先細末広ノズル(ラバールノズルともいう)を用いて超音速ジェットをつくる。一部の軍用機では、タービン後流に再度燃料を噴射して燃焼させるアフターバーナーを装備することで、短時間で大きな推力を得る。ジェットエンジンにはこれらの主要要素に加えて、燃料供給系、潤滑系、発電装置、始動器、冷却系などの補機類が付属しており、エンジン全体の運転や安全、機能の維持に不可欠な役割を果たす。これらの作動は、現代ではFADEC(ファデック)(全電子式エンジン制御装置)によって統合的に制御されている。

[佐藤哲也]2026年2月13日

分類

ジェットエンジンは、燃料を燃焼させて発生した高温・高圧ガスを後方に噴出し、その反動で推力を得る推進機関である。この用語には「狭義」と「広義」があり、狭義では、ガスタービン式かつ連続燃焼型で、燃焼ガスのジェット噴射によって直接推力を得るエンジンをさす。これにはターボジェットエンジンやターボファンエンジンが該当する。広義には、空気を吸入して燃料と混合・燃焼し、噴射によって推力を得るすべての空気吸い込み式推進機関が含まれ、これにはターボプロップエンジン、ターボシャフトエンジン、ラムジェットエンジン、パルスジェットエンジンなども含まれる。

①ターボジェットエンジンturbojet engine
ジェットエンジンの基本形態であり、圧縮機、燃焼器、タービン、ノズルから構成される。エンジンで得られた高温・高圧ガスを100パーセント、ジェットのエネルギーとして後方に噴射し、その反動で推進力を得る。構造が比較的単純で、とくに超音速域で効率が高いため、1950~1960年代の戦闘機や初期のジェット旅客機で用いられた。現在は燃費や騒音の低減に優れたターボファンエンジンが主流だが、ミサイルや一部の超音速実験機ではいまなお使用されている。さらに、極超音速飛行への応用を目ざし、吸入空気を冷却し圧縮効率を高める「予冷ターボジェットエンジンpre-cooled turbojet engine」の研究開発も進められている。

②ターボファンエンジンturbofan engine
ターボジェットエンジンをコアエンジンとし、その前方に大型のファンを取り付けた構造をもつ。燃焼ガスによる推力に加えて、ファンによって加速された空気の運動エネルギーがおもな推力源となっている。ファンを通過する空気のうちコアエンジンを通らず外側を流れる空気の量とコアエンジンに送られる量の比をバイパス比といい、この値が大きいほど燃費と静粛性に優れる。近年の民間旅客機用エンジンでは、バイパス比は10以上に達しており、なかには15に達する超高バイパス比エンジンの開発も進んでいる。一方、戦闘機などには高速性に優れた低バイパス比のターボファンエンジンが用いられる。近年では、タービンとファンの間に減速ギヤを入れてそれぞれを最適な回転数で運転するギヤードターボファンなども実用化されている。

③ターボプロップエンジンturboprop engine
ターボジェットエンジンにプロペラを組み合わせた構造をもち、タービンのエネルギーを減速装置を介してプロペラの回転力にかえ、主推進力とする。従来型のターボプロップは燃費に優れる一方で、巡航速度が比較的低速(時速600~700キロメートル)である。将来の超高効率推進技術として、オープンローター(open rotor)型ターボプロップの研究開発も進められている。これは、ターボファンのようにナセル(外殻)で覆われたファンではなく、外部に露出した大径の反転回転プロペラを用いることで、ターボファンに匹敵する巡航速度と、ターボプロップ並みの燃費性能の両立を目ざすもので、次世代の中長距離旅客機向けエンジンとして期待されている。

④ターボシャフトエンジンturboshaft engine
構造的にはターボプロップエンジンと類似しているが、推力を得るのではなく、回転軸からの出力を取り出すことを目的としている。エンジンの後方にあるフリータービンが燃焼ガスのエネルギーを受けて回転し、その動力を回転軸を通じて外部装置に伝達する。おもな用途はヘリコプターのメインローターの駆動であるが、VTOL(ブイトール)(垂直離着陸)機への適用例もある。

⑤ラムジェット/スクラムジェットエンジンramjet/scramjet engine
ターボエンジンとは異なり、圧縮機による機械的圧縮を行わず、高速で吸入した空気を空気取入口内部でせき止めて圧縮する(ラム圧縮)。圧縮された空気は燃料と混合されて燃焼し、高温・高圧の燃焼ガスがノズルから噴射されることで推進力を得る点は、ターボジェットエンジンと同様である。回転部をもたないため構造は簡素だが、静止状態では吸気・圧縮ができず、通常はマッハ0.5~2程度の飛行速度が必要とされる。ラムジェットエンジンでは、燃焼器に入る空気を亜音速まで減速して燃焼を行うが、より高速(マッハ5以上)での飛行では減速時の損失が大きくなるため、燃焼器内部で超音速状態のまま燃焼を行うスクラムジェットエンジンが使用される。これらのエンジンは、宇宙輸送機や極超音速航空機などへの応用が期待されている。

⑥パルスジェットエンジンpulsejet engine
前述のエンジンは連続作動方式であるのに対し、パルスジェットエンジンは間欠的な燃焼によって推力を発生させる。構造は単純で、吸気弁、燃焼器、排気ノズルからなり、吸気・燃焼・排気のサイクルを高頻度で繰り返すことにより、脈動的に推力を生み出す。旧来のパルスジェットエンジンは騒音が大きく、燃費も悪いという欠点があり、実用範囲は限られていた。近年では、より高効率・高推力を目ざす「パルスデトネーションエンジン(PDE)」の研究が進んでいる。PDEは、爆轟波(ばくごうは)(デトネーション波)を利用して瞬間的に高温・高圧の燃焼を行うことで、より高い熱効率を実現し、将来の超音速・極超音速飛行への応用が期待されている。

[佐藤哲也]2026年2月13日

燃料

ジェットエンジンの燃料は、高エネルギー密度、低凍結点、安定性に優れる石油由来のケロシン系(民間機用のJet A-1や軍用機用のJP-8など)が主流である。近年は脱炭素化の要請から、廃油や植物由来のSAF(サフ)(Sustainable Aviation Fuel。持続可能な航空燃料)、水素などの導入も進められており、既存エンジンとの適合性や安定的な供給体制の確保が鍵(かぎ)となっている。

[佐藤哲也]2026年2月13日

性能

民間機用ジェットエンジンは、燃費の向上、騒音の低減、NOx(窒素酸化物)排出の抑制を目的として、さまざまな技術革新が進められてきた。燃費の向上においては、ファン翼形状の最適化、材料技術や冷却技術の進展によって圧縮機の圧力比とタービン入口温度を高め、エンジンの熱効率を改善している。さらに、バイパス比の増加によって推進効率が向上し、燃費の改善に大きく貢献している。騒音の低減においては、バイパス比の増加に加え、排気ノズルにシェブロン形状(鋸歯(きょし)形状)を導入することでジェット騒音の低減が図られている。NOx排出の抑制においては、リーンバーン(希薄燃焼)などの燃焼技術の導入が進められている。一方、軍用機用ジェットエンジンでは、燃費よりも高推力・高加速性能や機動性が重視されており、アフターバーナーの搭載やタービン入口温度のさらなる昇温化、高応答性が求められる。また、近年はステルス性や高高度・超音速域での運用に対応するための設計技術も進展している。

[佐藤哲也]2026年2月13日

ジェットエンジンの今後

ジェットエンジンは今後も環境性能と燃費性能の両立を目ざして進化を続けていくと期待される。民間航空分野では、ターボファンエンジンのさらなる高バイパス比化やギヤードターボファンによる効率改善に加え、電動モーターと組み合わせたハイブリッド推進も注目されている。さらにSAFや水素燃焼に対応した燃焼器設計や材料技術の進化が期待される。一方、将来の極超音速輸送や宇宙輸送に向けて、スクラムジェットエンジンやパルスデトネーションエンジンなどの研究が進んでいく。その他、オープンローターの使用や機体に小型推進ユニットを複数配置した分散推進といった、機体との統合を前提とした新しい推進コンセプトも検討されており、ジェットエンジンは用途や速度域に応じて、今後も多様な進化を遂げていくと考えられる。

[佐藤哲也]2026年2月13日

©SHOGAKUKAN Inc.

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