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国際財務報告基準
こくさいざいむほうこくきじゅん
International Financial Reporting Standards

企業の財務諸表を作成する際の会計基準の一つで、グローバルスタンダードとされる。略称、IFRS。「イファース」「アイファース」とも称する。

 従来、会計基準は各国で独自に策定されてきたが、企業活動の国際化、多国籍企業の出現などに伴い、国際的に共通化を図ることの必要性が高まってきた。これにより開発されたのがIFRSで、IFRS財団の基準設定機関である国際会計基準審議会(IASB:International Accounting Standards Board)により作成・公表されている。なお、「IFRS会計基準」(IFRS Accounting Standards〈広義〉)という場合、会計基準としてのIASBが開発したIFRS(IFRS会計基準〈狭義〉)と、国際会計基準委員会(IASC:International Accounting Standards Committee)が開発した国際会計基準(IAS:International Accounting Standards、IAS基準)および、それぞれの基準に対する解釈指針から構成される。

[杉本徳栄]2026年2月13日

会計基準と基準設定機関

IFRSの前身は、主要国の職業会計士団体が1973年にイギリスのロンドンに設立したIASCが開発したIASである。IASの適用の解釈については、解釈指針委員会(SIC:Standing Interpretations Committee)が解釈指針(SIC解釈指針)の開発を担っていた。

 しかし、IASCが開発したIASは、比較可能性と準拠性の欠如などの問題を抱えていた。元来、財務諸表の比較可能性を高めることを目的としたはずのIASには、適用可能な基準の選択肢に幅があり、とくに企業間の比較可能性を阻害していた。また主要国の職業会計士団体を支持母体とするIASCは民間の国際組織であり、開発したIASを企業に遵守させる強制力などを持ち合わせていなかった。こうした会計基準(IAS)と基準設定機関(IASC)について、その問題や役割などを大きく変革させたのは、世界各国・地域の証券規制当局と証券取引所から構成される証券監督者国際機構(IOSCO(イオスコ))である。IOSCOは、グローバルな資本移動の増加を促進し、それに対応するために国際的に統一された会計基準が有用であると認識し、1988年11月の年次総会でIASCによるIASの比較可能性改善プロジェクトを支援する方針を決議した。この決議は、IASが国際的な基準として採用される転換点となり、比較可能性を重視したIASへの改訂作業を後押しし、IOSCOは2000年5月に、IASCによる30のコア・スタンダードを財務諸表の作成と表示の基礎となる基準として承認している。

 1997年7月、IASCは戦略作業部会を設置し、同部会による最終報告書「IASCの将来像に関する勧告」(1999年11月)を踏まえて、IASCの組織改革が展開された。これにより、2001年4月にアメリカのデラウェア州の法律に基づいて独立の公益財団法人としてIASC財団が設立され、この財団の一部としてIASCはIASBに改組された。また、IASBが開発する基準の名称もIFRSとなり、SICの後身である国際財務報告解釈指針委員会(IFRIC(イフリック):International Financial Reporting Interpretations Committee)が解釈指針(IFRIC解釈指針)の開発を担うこととなった。

 その後、2010年7月にIASC財団はIFRS財団に改称され、基準設定機関のIASBはIFRS財団によって理事の選任、監督および資金提供が行われるようになった。また、IFRICもIFRS解釈指針委員会(IFRS-IC:IFRS Interpretations Committee)に改称された。ただし、IFRS-ICによる解釈指針はIFRICが開発していたときと同様、IFRIC解釈指針という。なお、IFRS財団は2021年11月の定款変更により、基準の品質を高めて適用可能なIASとSIC解釈指針、そしてIFRSとIFRIC解釈指針の四つの総称を、IASBの設立時から使用されていた「IFRSs」から「IFRS会計基準」に改めた。

 同時に、IFRS財団はIASBによる会計基準に加えて、2021年11月にIASBの姉妹組織として設立した国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)において、サステナビリティ情報(ESG:環境・社会・ガバナンス関連情報)の開示に関するIFRSサステナビリティ開示基準(ISSB基準)の開発も担っている。なお、ISSB設立後は、IFRS会計基準とISSB基準をあわせて「IFRS基準」(IFRS Standards)という。

[杉本徳栄]2026年2月13日

IFRS財団

IFRS財団は、世界中の資本市場に透明性、アカウンタビリティ(説明責任)、効率性をもたらす高品質のIFRS基準を開発することを使命とし、3層構造の組織を有する。すなわち、IFRS会計基準の設定機関であるIASBとISSB基準の設定機関であるISSB(第1階層)、これら二つの基準設定機関のガバナンスを掌握し、監督するIFRS財団評議員会(第2階層)、および、IFRS財団の公的説明責任を向上させるために、IFRS財団評議員会と公的機関との間の正式な説明責任の結び付きを提供するIFRS財団モニタリングボード(第3階層)である。

 2012年(平成24)10月には、IFRS財団アジア・オセアニアオフィスが東京に開設されている。またISSBの設立に伴い、IFRS財団は、グルーバル・マルチロケーションの観点からISSBの活動を支援するために、ヨーロッパ・中東・アフリカ地域(EMEA(エミア))にはドイツのフランクフルト・アム・マイン(ISSB本部)に、アメリカ州地域(Americas)にはカナダのモントリオールに、アジアには中国の北京(ペキン)に常設オフィスを開設した。IFRS財団は、複数拠点体制によって世界のステークホルダー(利害関係者)と連携してIFRS会計基準とISSB基準の開発と普及を推進している。

[杉本徳栄]2026年2月13日

IASBの目的

IASB設立時の「国際財務報告基準に関する趣意書」によれば、IASBはIFRSと各国会計基準とのコンバージェンス(収斂(しゅうれん))を通じて、IASBが開発した基準および解釈指針の採用を推進し促進することを目的の一つに掲げる。従来、独自の会計基準を用いていた国では、IFRSが自国の会計基準にそぐわない可能性も考えられる。そのため、独自の会計基準を維持しながらIFRSとの実質的な差異を縮小するコンバージェンス方式が推進されたのである。なお日本では、コンバージェンスは「企業会計の基準について国際的に共通化を図ること」(連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則〈連結財務諸表規則〉第1条第3項第5号)を意味するとされている。

 IASBは会計基準のコンバージェンスを図るために、アメリカの財務会計基準審議会(FASB:Financial Accounting Standards Board)と日本の企業会計基準委員会(ASBJ:Accounting Standards Board of Japan)との間で、2002年と2005年からそれぞれ共同プロジェクトを推進してきた。またヨーロッパ連合(EU)が2005年から域内企業にIFRS強制適用を開始するとともに、第三国(アメリカ、日本、カナダおよび中国)の会計基準に対してEUが適用するIFRSとの同等性評価を実施したことや、2008年の世界金融危機(リーマン・ショック)の解消に向けて開催された20か国・地域首脳会合(G20。ワシントン・サミット)での「金融・世界経済に関する首脳会合宣言」(2008年11月15日)などが、IFRSと日米の会計基準とのコンバージェンスを促してきた。

 このようにIASBの基準開発は、日米の基準設定機関とのコンバージェンスを通じたバイラテラル(二国間)の関係を重視したものであった。こうした基準開発のあり方を各国基準設定機関や地域団体とのマルチラテラル(多国間)でより合理的なものにしたのが、IASBの第2代議長ハンス・フーガーホーストHans Hoogervorst(1956― )である。フーガーホーストは、IASBによる基準開発の作業計画や財務報告上の論点に関する優先順位を決定する主要な手段として、2011年にIASBの将来の作業計画の戦略的な方向性やバランスについて意見を求めるアジェンダ・コンサルテーション(アジェンダ協議)を組み入れ、また2013年にIASBの諮問機関として会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF:Accounting Standards Advisory Forum)を設置した。

 ASAFを設置した目的は、基準開発における各国基準設定機関と地域団体およびIASBの集合的な関係をより効率的なものに構築することで、基準開発における主要な技術的論点について広範囲の各国・各地域のインプットが議論され考慮されることを確保することなどにある。アジェンダ・コンサルテーションの組入れとASAFの設置は、いずれも多くの利害関係者から意見を「聴く」ことに主眼を置いたもので、その後のIFRSの基準開発に大きな変革をもたらした。

 一般目的財務諸表およびその他の財務報告の目的をはじめ、財務報告に関する諸概念を定義し、企業会計の基礎となる考え方や個々の会計基準を開発・解釈するための指針などを体系化したものとして「概念フレームワーク」(Conceptual Framework)がある。2004年、IASBとFASBは、会計基準に限らず、既存のIASBのフレームワークとFASBの概念フレームワークのコンバージェンスに関する共同プロジェクトも展開した。共同プロジェクトでは「一般目的財務報告の目的」と「有用な財務情報の質的特性」だけが共通化されたが、その後の2018年3月に、IASBは単独で「財務報告に関する概念フレームワーク」を取りまとめている。

 世界におけるIFRS会計基準の利用状況について分析したIFRS財団によれば、2025年5月時点で、169の管轄(法域)区域のうち161でIFRS会計基準の採用が約束されている。このうち148の管轄区域では、資本市場における国内の公的説明責任を負うすべてのまたはほとんどの事業体に対して、IFRS会計基準の適用を義務づけている。

 アメリカの証券取引委員会(SEC:Securities and Exchange Commission)は、2007年に外国民間発行体(外国企業)に対してIFRSの適用を容認した。アメリカ企業にもIFRSの適用を認めるコンセプト・リリース(概念通牒(つうちょう))やロードマップ案などを公表してきたが、SECはアメリカ企業へのIFRSの適用については、いまなお認めていない。

[杉本徳栄]2026年2月13日

日本のIFRSの適用

日本のIFRS導入に向けて潮目が変わったのは、日本経済団体連合会(経団連)と日本公認会計士協会がそれぞれ2008年(平成20)2月と7月に行ったEU視察にある。いずれもIFRSの強制適用から3年が経過したEUでの実態を目の当たりにし、財務諸表の作成者と監査人が共通して、日本もIFRSアドプション(採用)の選択肢を加えるべきとの認識を示したのである。これを受けて、金融庁による「我が国企業会計のあり方に関する意見交換会」(2008年7月31日、9月17日)の開催を機として、IFRS導入に向けた本格的な検討の場は金融庁の企業会計審議会へと移された。

 おりしも、リーマン・ショックが深刻化したときでもある。この危機を議論するワシントン・サミットでの「金融・世界経済に関する首脳会合宣言」に中期的措置として「単一で高品質な国際基準を策定する」ことが盛り込まれている。

 その後、金融庁の企業会計審議会が公表した「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」(2009年6月30日)は、会計基準をめぐる国際的な動向を踏まえ、日本の会計基準のあり方や今後の対応などについて取りまとめたものである。コンバージェンス継続の必要性をはじめ、IFRSの将来的な強制適用の展望を示して(IFRS強制適用の判断の時期は、とりあえず2012年を目途とするとした)、IFRSの適用に向けた課題に取り組みつつ、2010年3月期からIFRSの任意適用を認めることとされた。

 そうしたなか、政権政党の交代などに加え、IASBとFASBによる金融商品(減損・ヘッジ)、収益認識およびリースなどの会計基準のコンバージェンス作業の延期や、2011年3月11日に発生し未曽有(みぞう)の被害をもたらした東日本大震災など国内外でのさまざまな状況変化が、IFRSの取扱いにも影響を及ぼした。

 IFRS適用をめぐって、改めて「総合的な成熟された議論」を展開するため、2011年に企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議での審議が始まった。約2年間に及んだ審議の結果を取りまとめた「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(2013年6月19日)では、IFRSの任意適用の積上げを図ることの重要性を説き、IFRSの任意適用要件の緩和やIFRSの適用の方法などの考えが示された。

 IFRSの任意適用にあたっては、それまで3要件(上場していること、IFRSによる連結財務諸表の適正性確保への取組み・体制整備をしていること、国際的な財務活動または事業活動を行っていること)が課されていたが、「IFRSに基づいて作成する連結財務諸表の適正性を確保する取組・体制整備ができている企業」だけに緩和された。また、第二次安倍晋三(あべしんぞう)内閣による経済政策(アベノミクス)の成長戦略である『「日本再興戦略」改訂2014』(2014年6月24日)は、ワシントン・サミットの首脳宣言でうたわれた、会計における「単一で高品質な国際基準を策定する」目標の実現に向け、IFRSの任意適用企業の拡大促進に努めることを盛り込んだ。

 こうした拡大促進策を受けて、その後、日本のIFRS任意適用企業は増加している。東京証券取引所によれば、2026年(令和8)1月末時点で、IFRS任意適用済会社数は293社、適用決定会社数は9社となっている。

[杉本徳栄]2026年2月13日

©SHOGAKUKAN Inc.

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