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日本大百科全書(ニッポニカ)

アーク溶接

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アーク溶接
あーくようせつ
arc welding 英語

電気アークの熱を利用し、金属材料を局部的に溶融して接合する方法。電気アークは温度が5000~6000Kであり、金属を溶融させるのに非常に有効な熱源である。金属を大気中で溶接すると、大気中の酸素や窒素が溶融金属の中へ溶け込み、そのため凝固後の溶接金属の機械的性質が劣化することが多いので、一般には、被覆剤や不活性ガスを用いて溶融金属を大気から遮断して溶接する、各種の方法が採用されている。
 被覆アーク溶接は、被覆溶接棒と被溶接物(母材)との間にアークを発生させ、溶接棒と母材とを溶融させて溶接する方法である。被覆溶接棒は裸の金属心線の周りに有機物、無機物、脱酸剤などからなる被覆剤を塗布したものである。このような被覆剤はアークを安定させ、被覆剤から発生したガスおよび被覆剤自体が溶融して生成する溶融酸化物(スラグ)層によって溶接金属を大気から保護する。この方法はもっとも古くから発達したもので、設備も簡単で、構造用鋼をはじめ各種鋼材の各種姿勢での溶接に広く用いられている。この方法は一般に手で操作されるので手溶接ともよばれる。
 サブマージアーク溶接(潜弧(せんこ)溶接)は、溶接継手の表面に盛り上げた粒状フラックスflux(被覆剤)の中へ裸の電極線を送り込み、その先端と母材との間にアークを発生させ、連続的に溶接を行う自動溶接法である。アークはフラックスに覆われて外からみえないのでこの名称がつけられた。この方法は大電流で溶接ができるので非常に能率がよく、被覆アークに比べ溶接速度を3~6倍以上にすることができる。おもに造船、鋼管、貯蔵タンク、橋梁(きょうりょう)など大型構造物の溶接に利用されている。しかし継手に粒状フラックスを散布するので、溶接姿勢が限定される。
 不活性ガスアーク溶接としてはティグ(TIG)溶接(非消耗電極式)とミグ(MIG)溶接(消耗電極式)がある。両者とも溶接部へアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスを吹き付けて溶接するが、ティグ溶接はタングステン電極と母材との間にアークを発生させる。この場合、タングステン電極の先端は溶融せず、側面から挿入した棒状の溶加剤の先端と母材が溶融して溶接が行われる。薄板を溶接する場合は溶加剤を用いなくてもよい。ミグ溶接は電極線を用い、その先端と母材との間にアークを発生させ、両者を同時に溶融させて溶接する方法である。不活性ガスアーク溶接はフラックスが不要なため、どのような姿勢でも高能率の溶接が可能である。溶接部の品質が優れており、アルミニウム、チタン、ジルコニウムなど大気の悪影響を受けやすい金属の溶接に適している。
 炭酸ガスアーク溶接は、ミグ溶接の不活性ガスのかわりに安価な炭酸ガスを用いて鋼を溶接する方法である。炭酸ガスは高温で酸化性を示すので、あらかじめ電極線に脱酸性の成分を加えておく。この方法は自動あるいは半自動溶接で行われるが、最近、自動車、造船、橋梁など軟鋼、低合金鋼の溶接に、被覆アーク溶接にかわって急速に利用が拡大している。
 スタッド溶接もアーク溶接の一種である。この方法では、スタッドstudとよばれる直径10ミリメートルまでの金属棒材(銅、黄銅)を母材に接触させておき、次にスタッドを母材から少し離して電気アークを発生させる。スタッド先端と母材が適当に溶融したとき、スタッドを押し付けて溶接させる。とくに被覆剤や不活性ガスは用いないが、陶器製のアークシールドでスタッドの末端を囲み、その内部でアークを発生させる。最近この方法は鉄骨建築に多用されている。
[桑名 武・原善四郎]

©SHOGAKUKAN Inc.

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