専門職大学院の一つ。ロースクールともよばれる。「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律」(平成14年法律第139号。以下「連携法」と記述)により設置された。法科大学院は、学校教育法に定める専門職大学院であって、法曹に必要な学識および能力を培うことを目的とするものをいう(連携法2条)。専門職大学院とは、学術の理論および応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識および卓越した能力を培うことを目的とする大学院である(学校教育法99条2項)。法科大学院は、各大学により「法務研究科法務専攻」「法学研究科法曹養成専攻」など多様な研究科名・専攻名がつけられている。
法科大学院は、2004年(平成16)に開設された。これは、国の規制の撤廃または緩和に伴い、法および司法の果たすべき役割がより重要となり、高度の専門的な法律知識、幅広い教養、国際的な素養、豊かな人間性および職業倫理を備えた多数の法曹が求められるとされ(連携法2条)、2001年(平成13)の『司法制度改革審議会意見書』が、司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度の中核として法科大学院の創設を提言したことに基づいている。
法科大学院の入学者選抜では、非法学部出身者を一定割合で受け入れること、法科大学院志願者が適性試験管理委員会による法科大学院全国統一適性試験を受けることなどが求められた。ただし適性試験については、2019年度入学者の選抜から、その利用が各法科大学院の任意となった。加えて、選抜に適性試験を利用する大学院が予想以上に少なかったため、2019年度入学者については適性試験を行わないことが決定された。法科大学院では、実務に必要な学識およびその応用能力ならびに理論的かつ実践的な教育を体系的に実施することとされた(同法2条)。法科大学院の修了要件として、3年以上在学し、93単位以上修得することとされたが、とくに法学既習者は、1年以下・30単位以下を短縮することが可能とされた(専門職大学院設置基準18条~25条)。法科大学院の修了者には法務博士(専門職)の学位が与えられる(学位規則5条の2)。なお、法科大学院は、学校教育法の規定する認証評価機関による認証評価を受けなければならない(連携法5条2項)。
2002年の司法試験法の改正により、司法試験の受験資格は、法科大学院の課程を修了した者(司法試験法4条1項1号)と、司法試験予備試験に合格した者(同法4条1項2号)に与えられた。司法試験予備試験とは、法科大学院修了者と同等の学識およびその応用能力ならびに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定する試験で(同法5条)、その受験者は年々増加している。
法科大学院は、当初、全国で74校が開設されたが、その後法科大学院の受験者・入学者の減少傾向が続き、2018年には、このうち35校が募集停止となっている。将来的には、法科大学院における既習コースの整備、法学部教育との連携のあり方、予備試験の受験資格の検討などが課題となっている。
[田口守一]