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超伝導状態における電流のトンネル効果(ジョセフソン効果)を利用した低温で動作するスイッチング素子。温度の点に問題はあるものの、半導体素子よりはるかに優れた性能をもち、近い将来に集積化されることが予想され、夢のLSI(大規模集積回路)が出現するものとして大いに期待されている。全体を極低温に保ち、2枚の導体部分は超伝導状態とし、その間に100万分の数ミリメートルの薄い絶縁体を挟んだサンドイッチ接合構造とする。絶縁体は非常に薄いので、トンネル効果による電流は流れるが、接合部には電圧が発生しない。しかしある電流値を超えると、接合部は本来の絶縁体に戻り、一定のギャップ電圧(導体がニオブの場合は約3ミリボルト)が発生する。このスイッチング速度はきわめて速く、所要電力も少ない。微細加工して接合容量を小さくすると、数ピコ秒(10-12秒)の時間でスイッチすることができ、しかも消費電力は数マイクロワット(10-6ワット)である。これらの値の積(ピコ秒×マイクロワット)は半導体素子に比べて4桁(けた)も小さい。なお、ジョセフソン効果は、イギリスのケンブリッジ大学の学生であった22歳のジョセフソンが1962年に予言したもので、翌年アメリカのベル研究所によって実証された。
[川邊 潮]