日本大百科全書(ニッポニカ)

グラミン銀行
ぐらみんぎんこう
Grameen Bank 英語

貧困に苦しむ人々に無担保で少額の資金を融資して自立を促す銀行。バングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌスが設立した。グラミンとはベンガル語で「村の」という意味であり、融資を受けた農村部の多くの貧しい女性たちが行商、家畜飼育、裁縫などの小規模事業を始め、貧困から抜け出す助けとなっている。「貧者の銀行(Bank for the Poor)」ともよばれ、無担保による小口金融(マイクロファイナンス)の草分け的存在である。「貧困層の経済的・社会的基盤の構築に対する貢献」で2006年、グラミン銀行はユヌスととともにノーベル平和賞を受賞した。グラミン銀行のマイクロファイナンスは貧困対策の新手法として国際的に注目され、アジア、アフリカ、中東などの第三世界だけでなく、経済格差の拡大が指摘されるアメリカや日本にも広がっている。
 1974年のバングラデシュ大飢饉(ききん)で貧困のため飢えて死んでいく人々を目の当たりにしたユヌス(当時チッタゴン大学経済学部長)は、少額融資による貧困撲滅計画「グラミン・バンク・プロジェクト」を発案した。1976年にバングラデシュの農村部で無担保少額融資事業を始め、1983年にバングラデシュ政府認可の独立銀行(特殊銀行)として正式に発足した。融資対象は働く意欲や能力があるにもかかわらず貧困に苦しむ失業者やシングルマザーらで、大半が女性である。融資を受けた人は会員となり、5人1組の互助グループをつくり、担保が必要ないかわりに、返済の連帯責任をもつ。まず5人のうち2人に融資し、2人の返済状況をみながら残り3人に融資する。使途は起業や就労で所得を創出するために限定し、貯蓄を奨励し、生活費は融資対象としない。毎週開くミーティングに参加し、起業・就労支援、識字教育、保健衛生、家族計画などのプログラムを受けるよう義務づけられている。本部はバングラデシュのダッカ。2016年時点で会員数は約890万人、累積融資額は約267億ドル、融資の返済率は9割を超える。会員は銀行の株主となり、会員が9割以上の株式をもち、残りを政府と政府系金融機関が保有する。2007年に進出したアメリカでは10年間で累計10万人に総額9.4億ドルを融資した。日本では2018年(平成30)9月、一般社団法人「グラミン日本」(本部:東京都中央区、理事長:菅正広(かんまさひろ)(1956― )明治学院大大学院教授)が事業を開始した。
[矢野 武]2019年2月18日