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日本大百科全書(ニッポニカ)

オートファジー

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オートファジー
おーとふぁじー
autophagy 英語

生物の細胞が、細胞内のタンパク質を分解し、自らの栄養源などとして再利用するシステム。autophagyは、ギリシア語のauto(自ら)、phagy(食べる)からきている。日本語では自食作用と表現される。一般的に、動物では「リソゾーム(リソソーム)」、植物や酵母では「液胞」という細胞内小器官がオートファジーを担う。
 オートファジーは、1960年代に、リソゾームで、その現象の存在が確認されていたが、その分子メカニズムは長らくわからなかった。その解明に貢献したのが、生物学者の大隅良典(おおすみよしのり)(1945― )である。大隅は1988年(昭和63)に東京大学教養学部生物学教室助教授となって研究室を率い、あまり注目されていなかった酵母の「液胞」に着目した。わずか2か月後に、大隅、馬場美鈴(ばばみすず)(当時、日本女子大学研究員)ら研究スタッフは、液胞の中に、ミトコンドリアやタンパク質が取り込まれ、分解されていく様子を顕微鏡で撮影することに世界で初めて成功した。大隅らは、さらに酵母を栄養不足状態にすると、細胞質の中に隔離膜ができ、その膜がどんどん大きくなり、不要なタンパク質を取り込んだ二重膜構造の分子「オートファゴソーム」が形成されることを突き止めた。そして、このオートファゴソームが、液胞と融合して不要なタンパク質が分解され、生存に必要なタンパク質が生み出されていくオートファジーの仕組みを解明した。
 その後、大隅らは1993年(平成5)、栄養不足にしてもオートファジーが起こらない酵母と正常な酵母の比較からオートファジーに不可欠な遺伝子群(ATG)を発見。オートファジーの制御にかかわる遺伝子は酵母以外の人間などの高等生物でも存在することが解明された。これを機にオートファジー研究は世界的に急速に広がった。大隅はオートファジーの仕組みを解明した功績により、2016年のノーベル医学生理学賞を受賞した。
 オートファジーが注目されるのは、生存に欠かせない仕組みであるという理由だけでなく、多くの病気、感染症の予防、免疫応答などに深くかかわっていることがわかってきたからである。たとえば、高齢化社会で暗い影を落とすアルツハイマー病は、脳の神経細胞に不要なタンパク質が蓄積して発症するといわれているが、こうした神経系の病気はオートファジーの掃除・分解機能が正常に働かないためではないかと考えられている。癌(がん)細胞もオートファジーを逆に悪用して生き延びることがわかってきた。本来、癌は不要な細胞として、細胞内小器官の「ミトコンドリア」などによる細胞死(アポトーシス)誘導によって除去される。しかし、放射線治療や抗癌剤投与によって、ミトコンドリアが傷つけられると、オートファジーが活発になり、ミトコンドリアを処理してしまう。つまり、癌細胞は、オートファジーを巧みに利用して、治療から逃れていることになる。ほかに細菌などの感染を防ぐ作用も確認されており、研究が進めば、病気の画期的な予防法や治療法の解明につながると期待されている。
 オートファジー同様に細胞内の掃除を担うものとして、「ユビキチン‐プロテアソーム系」がある。ユビキチンがピンポイントでの除去を行うのに対し、オートファジーはまとめて一気に分解することからバルク分解(バルクは嵩(かさ)が大きいという意味)とよばれる。
[玉村 治]

©SHOGAKUKAN Inc.

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