日本大百科全書(ニッポニカ)

ローマー
ろーまー
Paul Michael Romer 英語
[1955― ]

アメリカの経済学者。ニューヨーク大学教授。専門は経済成長論。「知識やアイデアの蓄積」が技術革新(イノベーション)を育み、これが経済成長を牽引(けんいん)するとの内生的成長理論(Endogenous Growth Theory)を確立し、IT(情報技術)革命を予見したことで知られる。2018年、「長期的なマクロ経済分析に技術革新の要素を組み入れた」功績でノーベル経済学賞を受賞した。エール大学教授のウィリアム・ノードハウスとの共同受賞。
 アメリカのコロラド州デンバー生まれ。1977年シカゴ大学数学科を卒業、1983年シカゴ大学で経済博士号(Ph.D.)を取得し、シカゴ大学教授、スタンフォード大学教授などを経て、2011年からニューヨーク大学教授。従来の新古典派経済学の経済成長理論(ソロー・モデルSolow Model)は、資本と労働力を投入すれば経済は成長し、その後、成長は鈍って一定水準に落ち着くとされていた。しかし1世紀以上にわたって経済成長を続けるアメリカや、資本や労働力を投入しても成長しない途上国などの状況をうまく説明できなかった。ローマーは1986年の論文『Increasing Returns and Long-run Growth』(邦訳『収穫逓増(ていぞう)と長期成長』)や1990年の論文『Endogenous Technological Change』(邦訳『内生的な技術変化』)で知識やアイデアの蓄積に着目。技術革新は突然降ってわいてくるもの(外生的)ではなく、研究開発や教育への投資によって知識やアイデアが集積した国・地域で生まれやすく、これが成長の鍵(かぎ)になるという内生的成長理論を確立した。ローマーの成長モデルは持続的な経済成長のメカニズムを解明し、多くの経済学者に応用され、日本はじめ多くの国の成長戦略づくりに影響を与えた。同時に、アメリカのアップル、アマゾン、グーグルといったIT企業が主導するデジタル革命をみごとに予見し、その実証分析に活用されている。1997年に『タイム』誌の「アメリカで最も影響のある25人(American's 25 most influential people)」の一人に選ばれ、2016年から2年間世界銀行チーフエコノミストも務めた。
[矢野 武]2019年2月18日