東アジア全域をほぼカバーする自由貿易協定(FTA)。ASEAN(アセアン)(東南アジア諸国連合)10か国と日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの計16か国が締結を目ざしている。英語のRegional Comprehensive Economic Partnershipの略で、アールセップと発音する。日本では「東アジア地域包括的経済連携」と訳され、広域で自由貿易協定を結ぶメガFTAの一つである。2013年(平成25)から交渉を開始し、物の関税の削減・撤廃、投資、サービス貿易、知的財産保護などのルールづくりなど18分野について協議している。通常、自由貿易協定は関税撤廃を原則とするが、RCEPは「参加国の異なる発展段階を考慮し、特別のかつ異なる待遇及びASEAN加盟国の後発開発途上国に対する追加的な柔軟性」を認める、緩やかな協定を目ざす特徴がある。実現すれば、域内人口は約35億5000万人(2017年国連推計)と世界のほぼ半分、域内総生産は約26兆ドル(2018年IMF統計)と世界の約3割を占める世界最大規模の自由貿易圏が誕生する。アメリカが環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、米中の貿易戦争が激化するなど世界的に保護主義が蔓延(まんえん)するなか、RCEPはアジア・太平洋地域の自由貿易を維持・発展させる要(かなめ)になるとして関心を集めている。
2005年に中国が提唱した東アジア自由貿易圏構想(ASEAN+日本、中国、韓国)と、2007年に日本が提唱した東アジア包括的経済連携構想(ASEAN+日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド)を包含した貿易圏構想である。2012年の東アジア首脳会議で交渉開始を決議した。これまでに経済技術協力、中小企業、税関手続き・貿易円滑化、政府調達、紛争解決の5分野で実質合意したが、投資、知的財産権、電子商取引などでは主張に隔たりがあり、交渉は難航している。アメリカ抜きのTPPが2018年末に発効したが、TPPに参加していない中国、インドなどは、東アジアの自由貿易ルールの主導権を握るためRCEPの実現に積極的である。
2019年2月18日