日本大百科全書(ニッポニカ)

北海道胆振東部地震
ほっかいどういぶりとうぶじしん

2018年(平成30)9月6日3時7分ころ、北海道胆振地方中東部(北緯42.7度、東経142.0度)で発生した震源の深さ約37キロメートル、気象庁マグニチュード(MJ)6.7、モーメントマグニチュード(MW)6.6の地震。気象庁が命名した本地震の正式名称は「平成30年北海道胆振東部地震」。ほぼ南北走向の断層の東側の岩盤が、西側の岩盤に乗り上げるように動いた陸域のプレート内部の逆断層型の地震である。これは東西方向に強い力が加わったためだと解釈できる。震源断層は、地表までは達していない。なお、本地震の震央の約10キロメートル西側には石狩(いしかり)低地東縁断層帯とよばれる活断層帯が存在することが以前より知られていた。しかし、本地震の震源断層は、この活断層帯とは有意に離れており走向も異なることが地震観測などにより明らかになっている。
 震央付近の北海道厚真(あつま)町で震度7、その近隣のむかわ町と安平(あびら)町で震度6強を観測した。震度7を観測したのは、1995年(平成7)兵庫県南部地震(M7.3)、2004年新潟県中越地震(M6.8)、2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)、2016年4月14日と16日の熊本地震(それぞれM6.5とM7.3)に続いて6例目である(震度7は、1948年〈昭和23〉の福井地震をきっかけとしてその翌年に導入された)。これらのうちで、本地震の特徴として、震源が比較的深いことがあげられる。実際、東北地方太平洋沖地震以外の4例は、本地震と同様、陸域のプレート内部で発生したものであるが、震源の深さはすべて十数キロメートルと、本地震に比べ有意に浅い。気象庁は2013年3月から長周期地震動の情報を試行的に提供しているが、厚真町および千歳(ちとせ)市(新千歳空港)で、長周期震度階級4を観測した。長周期震度階級4を観測したのは、2016年4月14日と16日の熊本地震に続いて、これが3例目である。
 この地震の震央や石狩低地東縁断層帯の付近では、2014年11月3日の地震(M4.6、最大震度4〈厚真町、むかわ町〉)、2017年7月1日の地震(M5.1、最大震度5弱〈安平町〉)など、マグニチュードが5程度、震源の深さが30キロメートル程度のやや深い地震が時折発生していたが、6を超えたものは、1923年(大正12)以降、これが初めてである。
 この地震による死者は41名、重軽傷者749名、全半壊家屋1761戸(2018年11月6日時点。消防庁資料)。建物被害のほかに、地盤の液状化や広範囲かつ大規模な斜面崩壊が起きた。斜面崩壊は、多数の住宅を巻き込み、農地や山林などにも大きな被害を与えた。斜面崩壊の総面積は、1891年(明治24)濃尾(のうび)地震(M8.0)、2004年新潟県中越地震(M6.8)や2008年岩手・宮城内陸地震(M7.2)などとともに明治以降では最大規模のものである。苫小牧(とまこまい)港や札幌(さっぽろ)市で、地盤の液状化が確認されている。震央から約60キロメートル離れた札幌市清田(きよた)区の谷地形を盛り土した造成地では、液状化により道路の陥没や地盤の沈下、住宅の傾斜、土砂の流出などの大きな被害があった。本震発生により、北海道内主力電源である苫東(とまとう)厚真火力発電所をはじめとした道内のすべての電源が緊急停止した。その影響で、離島を除く北海道全域の約295万戸で停電が発生した。地震発生2日後までには99%以上の戸数で停電は解消したが、完全な停電解消までには、ほぼ1か月を要した。
[山下輝夫]2019年3月20日