本書は一見したところ,これまでの英文法の本と変わらないではないかと思われるかもしれないが,読み進むうちに,すべてが「標準英語」を話し,書くという「発信的」な目的に集約されていることに気づかれるはずである。本書は,何よりもまずなるべく英語のネイティブ感覚を身につけて「標準英語」を話し,書くことができるようになることを目標にしている。
英語で表現する以上は当然日常会話の学習にも繋がるが,昨今のインターネットの普及につれて,話し言葉でメールを書くことも急速に増えている。と同時に,英語で文書を書く必要性は学生にも社会人にも痛切な問題である。
章の配列は,取りつきやすいように従来の英文法書の項目と同じようにしてあるが,内容的には大きな違いがある。あまりにも細かいことにこだわりすぎてわかりにくいと言われてきたこれまでの英文法書は,主として英文読解のために作られたものである。これに対して,主として標準英語を話し,書くために作られた本書では,綿貫陽先生とマーク・ピーターセン先生お二人に,まず標準英語を作るのに必要な文法項目の精選をお願いし,そして,英語で「発信」したい意味を正確に表現できるように,各項目には英語の基本的な働きについて,できるだけわかりやすい説明を加えていただいた。
解説の本文は,緑色で示した英文とともに必ず読んでいただきたい。もし難しくて理解できない部分があったら,一旦飛ばしてもよい。チェックしておき,学習が進んだ段階でもう一度そこに立ち戻って読めばきっとわかるはずである。絶えず前へ,前へと進んでいくことが大切なのである。
文法的解説は,「標準英語」で文を書き,話すという見地から,枝葉末節的なことはすべて省き一時的に流行している俗語などは取り上げていない。一方,必要と思われるがやや高度な内容は,最新の英米の文法・語法書や辞書などから,本文の解説をより深く明快にしてくれるのに役立つようなものを,発展欄として簡潔にまとめていただいた。ここは,最初は飛ばして読んでもよい。
用例文は,すべて信頼できる新聞・雑誌・ガイドブックその他幅広い分野から綿貫先生がコンピューターで検索して提示し,引用する際にはその出典を確認し,ピーターセン先生に,「標準英語」として自然であるかどうかの検証と,必要に応じてその文に手を加えていただくことをお願いした。
各見出し項目の解説のための英文はすべて青字で示し,訳文は直訳的な英文解釈文ではなく,ネイティブから見ると,この英文はこういう日本文に当たるという見地から,なるべく自然な日本語の訳文を示した。常に,その訳文を見て元の英文が出てくるように練習すれば効果は倍増する。
訳文下の●は,その英文に関する注記である。その英文を訳すとなぜそうなるのか,というようなことを中心にできるだけ丁寧に解説していただいた。
注意は,そこの項目全般にわたるもので,平素はあまり関心を持たれないが重要なことを,特に取り上げて解説していただいた。
発展は,本文で書いた基本的な解説に加えて,英米の語法書や辞書などから,理解しておくと英文がより正確に書けるというような参考的な記述を加えていただいたものである。今まではっきりしなかったことがよくわかったという,これまでの読者の声を参考に書かれたもので,参考と併せて読んでいただきたい。
参考は,英語表現の広範囲にわたる知識を,そこにある例文に関係づけて書かれている。最新の英米の辞書や研究書に見られる語法の変化の解説や,そこに示されている英文表現の実際の場での応用などについて触れていただいた。
(参照項目) 本文の中で他の項目を参照した方がよい箇所にはリンクを付与した。ある表現は,他の表現と関係を持つ場合が多いのでその参照先を調べ,有機的に活用していただきたい。
◆解説の欄は,例文の裏にある英米の文化的背景を解説したものである。英米人は,子供のころから「マザー・グース」のようなわらべ歌や物語に親しんできているので,日常の会話やメールにふとそうした言葉が出てくることがある。ことわざや名言もそうであるが,ここではもっと幅広く,1つの用例文を理解するのに役立つように,その実際的な内容についても具体的に解説していただいた。
英語と日本語との比較研究を続け,日本人の書いた英文を永年にわたって審査・添削してきた経験をお持ちのピーターセン先生が,当該各所に書かれている文に関連して,ネイティブの立場から日本人の英語のどこがおかしいのかという理由を具体例を交えながら書かれたものである。個々の感想のようであるが,体系的にまとめられているので,大いに参考にしていただきたい。またネイティブ感覚というものがどのようなものであるのかも併せて学んでいただきたい。
(5)「索引」は,文法事項,英文語句,日本語表現についても示した。ご覧いただけばわかるように,ページ数の許す限り詳しいものにした。文法用語は,これを覚えるというのではなく,他書に出てくる文法用語が本書ではどのように扱われているかを知るためである。また,同一項目について参照ページが多い場合には,中心となる箇所を太字で示しそこからさらに参照できるようにした。
演習問題は,「確認問題」と「実践問題」とに分けた。「確認問題」は,大学入試問題形式による基礎的問題で,初学者でもできるようにしてある。ここでつまずいたら必ず本文に立ち返ってマスターしてほしい。
「実践問題」は,TOEIC の形式で,大問1は日常会話の応答,大問2は本文の例文と同じような時事英語,ビジネス英語も交えた英文を選んである。一見文法問題に見えるが,内容的に日常会話の慣用表現と,時事問題やビジネス英語で実際に目にすることの多い英文が幅広く学習できるように構成していただいた。答え合わせだけで済まさずに,正しくなった英文をもう一度よく読むことをお勧めする。やや専門的な単語が入っていると思われても,時事問題やビジネス英語に関心のある読者は,このレベルの単語はこの機会にぜひ覚えていただきたい。
「解答・解説」は,まず(解答)を「確認問題」と「実践問題」の順に示し,必要な箇所には*で注記を添えた。「実践問題」には注だけではなく大問1,2ともに(全文訳)を載せておいたので,英文とともに再三読んでいただきたい。
句読点の用い方は比較的簡単に考えられているが,正式な英文を書くときには極めて厳重にチェックされるものであるから,平素から相手が読みやすいように決まりを守る必要がある。コンマ,セミコロン,コロン,ピリオドの順に,区切りが明確になっていくことを知っているだけでも役に立つ。
(8)「英文手紙・Eメールの書き方」は,親しい友人同士の場合はともかく改まったメールを書く場合には,国際的に共通する常識に従って書かないと教養を疑われることになりかねない。例とともに参考にしてほしい注意も書き添えた。
かっこ記号には4種類あり,それぞれ次のように使っている。
( )― 省略可能 [ ]― 言い換え可能
〈 〉― 公式的な英文語句・構文 〔 〕― 日本語の解説
[正][誤]― 基礎的な事項で,正誤のはっきりしているものを示した。
英文を書くためには,いろいろな見地から精選した短文を暗記することが不可欠と言われている。そこで本冊の英文から必須の短文300を選び,和英対照式で覚えやすくして提供した。