CD-ROM版の刊行にあたって
ここにCD-ROM版『太陽』を刊行するに至ったことは、日本近代文学館として画期的な事業であるばかりでなく、日本近代の社会・文化全般の研究にとってきわめて意義ふかいものであると自負しております。
『太陽』は明治、大正期を代表する総合誌であり、政治、経済、社会はもとより、諸産業、歴史、地理、自然科学、文学、芸術、家庭など近代日本に関わるあらゆる分野の研究にとって必須の資料です。しかし、全531冊、17万5000ページにおよぶこの大部の雑誌を完全なかたちで所蔵しているところはほとんどありません。
このCD-ROM版『太陽』がこうした研究資料として重大な役割を果たすことは疑問の余地がありません。しかも、CD-ROM版の性質上、検索等きわめて便利に利用が可能ですから、多くの研究者に活用され、多くの分野の研究に資するものと確信しております。
文学館は貴重な文学資料を収集、保存し、研究者等の閲覧に供し、さらにひろく公表することにその基本的な存在意義があります。このため、日本近代文学館はこれまで30余種の文芸誌を複刻、刊行してきましたが、複刻が困難な大部の雑誌については八木書店と提携して「マイクロ版近代文学館」シリーズとしてマイクロフィルム化による公表を図ることとし、その第1集として、20余年前『新潮』マイクロ版を刊行いたしました。『太陽』の複刻もこのシリーズの中で計画し調査を進めてきたものです。
刊行のため膨大な労力を費して下さった編集委員の方々、刊行を許可して下さった著作権者の方々、刊行までの長い時間を辛抱強くお待ち下さった版元の博文館新社、その他八木書店はじめご協力いただいた関係者の皆さんに心からお礼申し上げます。
1999年12月
財団法人 日本近代文学館
刊行の辞 ~マイクロ版・CD-ROM版・DVD版近代文学館~
わが国近代文学の、散逸のはなはだしい諸資料・文献を収集・保存する運動が、文壇・学界・マスコミ関係の有志百余名によって発起され、日本近代文学館が創立・発足したのは1962年春でした。以来、文学館では貴重な各種の資料・雑誌を、多くの方々の援助を得て収集するとともに、文芸雑誌複刻版、各種『名著複刻全集』、『日本近代文学大事典』、各種『資料叢書』などを刊行してまいりました。
ところが近代・現代文学の研究には、最も基本的で欠くことのできない『新潮』『文章世界』『新小説』『太陽』など主要な諸雑誌は、完全なかたちではなかなか揃っているところがなく、何よりも必要なものとされながら、余りにも規模が大きすぎるなどの困難により、容易に実現しませんでした。1977年、研究検討の結果、八木書店の協力と、発行元・著作権者の方々の援助を得て、「マイクロ版近代文学館」シリーズの刊行を開始しました。その後このシリーズはCD-ROM版、DVD版へと発展してきております。
図書館・大学・研究者から要望の多かった日本近代の最も重要な総合雑誌・文芸雑誌を刊行できることは、たいへん意義深いことであり、また、大きな喜びであります。このシリーズが多くの方々に活用されることを願ってやみません。
関係者各位に深く感謝の意を表します。
財団法人 日本近代文学館