おもにインド洋で発生する数千キロメートルスケールの巨大雲群が、赤道に沿って毎秒約5メートル程度の速度で東へ進み、多くは太平洋の日付変更線付近で消滅する現象のことで、英語の頭文字をとってMJOと略される。雲は日付変更線付近で消滅するが、マッデン・ジュリアン振動に伴う風の分布は東進を続け、地球を一周する。発生周期が30日から60日で、季節より短いので季節内変動に分類される。名称の由来は、1972年にアメリカの気象学者マッデンRoland A. Madden(1938― )とジュリアンPaul R. Julian(1929― )によって赤道上の風と気圧に40~50日の周期性があることが発見されたことによる。
マッデン・ジュリアン振動は、全体的には東進するが、分岐して北進や南進する循環場もある。インド洋のモンスーンは、マッデン・ジュリアン振動の北進にあわせて始まり、1~2か月周期で強弱変動するなど、非常に深く関連している。また、海洋に大きな影響を与え、対流圏下層の強い西風(西風バースト)を伴っていることから、エルニーニョ現象の開始や終了に関連しているという研究もある。さらに、マッデン・ジュリアン振動に伴う対流活動の活発な領域では熱帯低気圧の発生が促進されるという研究もあり、熱帯の天候と密接な関係をもっている。また、偏西風やジェット気流の異常やブロッキング現象などを通じて、日本に異常気象とよばれるような天候をもたらす間接的要因ともなっている。
2020年3月18日
周期30~60日程度の大気変動を一般に季節内変動(ISO Intraseasonal Oscillation)と呼ぶが、そのうち活発な積雲対流域とともに熱帯域を東進する現象を、2人の発見者にちなんでマッデン・ジュリアン振動(MJO)という。この振動は活発な対流域に向けて対流圏下層で収束し、上層で発散する大規模な循環構造をもつ。これは赤道域の大気の東西循環(ウォーカー循環)に似た循環である。MJOにともなう赤道西太平洋上の強い西風により励起された海洋の波動が、エルニーニョ発生のきっかけにもなるため、季節予測にも重要。無数の積乱雲が大規模に組織化されたMJOの内部構造が、雲を解像する超高解像度の大気大循環モデルを用いてようやく再現可能となった。→エルニーニョ現象、→季節予測、→大循環モデル
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