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竹取物語

ジャパンナレッジで閲覧できる『竹取物語』の日本古典文学全集・世界大百科事典・国史大辞典のサンプルページ

新編 日本古典文学全集
竹取物語
たけとりものがたり
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竹取物語 全体

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竹取物語 拡大

【現代語訳】
〔一〕
今では、もう昔のことになるが、竹取の翁という者がいたのである。その翁は山野に分け入っていつも竹を取り、その竹を種々の物を作るのに使っていたのである。翁の名は、散吉の造といったのである。ところで、ある日のこと、翁がいつも取っている竹の中に、なんと根元が光る竹が一本あったのである。ふしぎに思って、そばに寄って見ると、竹筒の中が光っている。その筒の中を見ると、三寸ばかりの人が、たいそうかわいらしい姿でそこにいる。
翁が言うことには、「私が毎朝毎晩見る竹の中にいらっしゃったご縁で、あなたを知りました。竹の中にいらっしゃったから、駄洒落で言うわけじゃないが、あなたは籠ではなく、私の子になる運命の人のようですよ」と言って、小さいので抱くこともならず掌に入れて、家へ文字どおり「持って」帰った。妻の嫗にまかせて育てさせる。そのかわいらしいこと、この上もない。たいそう幼いので、そこはそれ、商売柄たくさんある籠の中に入れて育てる。

【目次】
目次
古典への招待

竹取物語(扉)
凡例
竹取物語(扉)
かぐや姫の発見と成長
〔一〕竹取の翁の紹介とかぐや姫のおいたち
〔二〕多くの貴公子たち、争って求婚す
五人の貴人と第一の求婚者石作皇子
〔三〕求婚者の多くは断念、五人だけがなお執心
〔四〕かぐや姫、五人の求婚者に難題を提示
〔五〕石作の皇子と、仏の御石の鉢
くらもちの皇子と蓬莱の玉の枝
〔六〕くらもちの皇子と、その謀略
〔七〕くらもちの皇子、偽りの苦労談を語る
〔八〕工匠の訴えにより、万事は露見
阿倍の右大臣と火鼠の皮衣
〔九〕阿倍御主人、火鼠の皮衣を入手
〔一〇〕火鼠の皮衣、あっけなく燃える
大伴の大納言と龍の頸の玉
〔一一〕大伴御行、龍の頸の玉を取れと命ず
〔一二〕大納言みずから、海上に出て大難にあう
〔一三〕大納言、かぐや姫を断念し家来たちを許す
石上の中納言と燕の子安貝
〔一四〕石上の中納言、燕の子安貝を取らんと計画
〔一五〕中納言みずから子安貝を取らんとし、失敗
かぐや姫、帝の召しに応ぜず昇天す
〔一六〕帝、かぐや姫を召さんとして手をつくす
〔一七〕帝、狩をよそおい、かぐや姫に会いに行く
〔一八〕帝とかぐや姫、その後も、歌の贈答
〔一九〕かぐや姫、この頃、月を見て嘆く
〔二〇〕帝、竹取の翁に使いを出し昇天を確かめる
〔二一〕帝、かぐや姫の昇天をはばもうと兵を出す
〔二二〕迎えの天人来たり、かぐや姫昇天
〔二三〕帝、かぐや姫を慕い、不死の薬を焼く
校訂付記
解説
一 書名とその背景
二 成立の過程
三 成立年代と作者
四 構成をめぐって
五 素材と背景
六 構想・方法・文学性
七 伝本と底本
参考資料
参考文献



改訂新版・世界大百科事典
竹取物語
たけとりものがたり

平安前期の物語。1巻。別称《竹取の翁(おきな)》《かぐや姫の物語》《竹取翁物語》。作者不詳。成立時期は諸説があるが,9世紀後半から10世紀の初め,《古今集》成立以前とみられる。現存本はその後多少の改補がある。

あらすじ

昔,竹取の翁という者が竹の中から見つけ出して育てた3寸ばかりの小さな女の子は,3月ほどで輝くばかりの美女となった。その後,翁は黄金(こがね)の入った竹を見つけることが重なり,翁の家は豊かになった。〈なよ竹のかぐや姫〉と名付けられた娘の,その美しさに求婚する者も多く,とくに熱心な5人の貴公子に姫はそれぞれ難題を課し,その解決を結婚の条件にしたが,結局,5人とも失敗する。最後には帝の求婚もしりぞけた姫は,十五夜の晩,迎えに来た天人たちとともに,みずからのくにである月の世界へと昇ってゆく。そののち,姫に去られ傷心の帝は,姫が形見に置いて行った不死の薬ももはや不要だとして,それを天に最も近い駿河国の山で燃やすよう命じる。たくさんの士(つわもの)が命を受けて登り,薬を燃やしたので,その山を富士(不死と,多くの〈士〉に掛ける)と名づけ,その煙は今も山頂に立ちのぼっていると伝えられる。

構成

竹の中から子どもを発見し,諸種の経過をへて,その子が昇天するという伝奇的な古型の〈かたりごと〉竹取説話を土台にして,(1)かぐや姫の生いたち(化生説話,致富長者説話),(2)貴族たちの求婚(求婚難題説話),(3)帝の行幸(相聞説話),(4)姫の昇天(羽衣・昇天説話,貴種流離説話),(5)富士の煙(地名起源説話)というような構成である。それは先行かたりごとの諸種の話型をとり入れ,伝統的な,人々になじみの深い外衣を活用しつつ,平安王朝社会の上流貴族たちの俗悪腐敗の実態を風刺,滑稽,ユーモアの筆致で批判的に語り,〈伝奇性(浪漫性)〉と〈現実性〉とを巧みな〈虚構性〉によって統一して描き,それに作者の鋭い〈批判性〉を含め,現実社会の真実表現としての新しい機能をもった〈物語文学〉というジャンルを創造したものであった。それゆえ,《源氏物語》の〈絵合(えあわせ)〉巻では,《竹取物語》を〈物語のいでき初めの祖(おや)〉とのべている。《竹取物語》は,単に世態小説として真正面から貴族社会の実態を描こうとしたものではなく,民俗的な伝承形式を活用して広い読者層になじみの深い親近性をもたせつつ,笑いの中に社会批判をこめ,貴族社会の内情を描き出している点で,日本における風刺小説の先駆ともいえる。だが,この作品は貴族社会の俗悪性暴露にのみ主題を置いたものではなく,そのような社会においても,なお,かぐや姫と翁,嫗,あるいは帝と姫とのあいだに流れる人間的な愛情の美しさを描き出して見せている。とくに昇天の段などでは,俗悪な社会においても,なおそれに侵されない,清く美しいものの存在を象徴し,読者の前に清純にして永遠なるものへの志向を提示している。《竹取物語》を現実社会の矛盾を暴露して見せた風刺文学とのみ見るのは一面的であり,また,かぐや姫の昇天に象徴されるような浪漫的文学とのみ見るのも一面的で,まさに〈をかし〉と〈あはれ〉との世界の,みごとな統一的作品である。

作者について

このような世界を描き出して見せた作者は,現実の貴族社会の俗悪面に矛盾を感じつつも,なお人間世界での清純なものにあこがれた人で,和・漢・仏教等の教養ゆたかな男性であったようである。作者については,従来,源順(したごう),源融(とおる),僧正遍昭,斎部(いんべ)氏の一族などの諸説があるが,確証はない。《竹取物語》は,上述したごとく,対照的な要素を,伝統的な形態の中に創造的な契機をふくめて,巧みに描き出した物語で,たわいなく,おもしろく,美しく,深みのある作品である。
[南波 浩]

[索引語]
かぐや姫 富士山 源順 源融 遍昭

国史大辞典
竹取物語
たけとりものがたり
一巻。『かぐや姫の物語』(『源氏物語』蓬生の巻)という呼称もあったようだが、現存本の状態から見ても、『源氏物語』絵合の巻にみえる「竹取の翁の物語」という呼称が最も一般的であったらしい。成立年代は、同じく『源氏物語』絵合の巻に「物語の出来(いでき)はじめの祖(おや)」と記されているように、平安時代物語文学の始祖という扱いを受けているものの、現存本に関しては、内容や文章から見て、九世紀後半から十世紀前半にかけての成立と見るほかはない。だから作者も当然不明である。成立に関連して一言しておかなければならないのは、『今昔物語集』巻三一の第三十三話にみえる「竹取の翁、見付けし女の児を養へる語」との関係である。この両者を比べると、特に冒頭部分においては確実にかかわりあっている。しかるに、『今昔物語集』の竹取説話では、求婚者は『竹取物語』の五人に比べて三人であるが、現存の『竹取物語』においても「三」という数を基本に据える作り方が根底にあること、そして求婚者に対してかぐや姫が要求する難題も「仏の御石の鉢」(『西域記』)、「蓬莱の玉の枝」(『列子』)、「火鼠の皮衣」(『神異記』)、「竜の頸の玉」(『荘子』)というように漢籍や仏典の知識を前提にしている『竹取物語』のそれに比べて、『今昔物語集』では仏教的な知識に属する「優曇華(うどんげ)の花」を除いては「空に鳴る雷」「打たぬに鳴る鼓」というように民間説話にふさわしい素朴さを保持していることなどを思い合わせると、『今昔物語集』の竹取説話は、『竹取物語』の原型を簡略化したものではなかったか、言い換えれば『竹取物語』の原型は、『今昔物語集』の竹取説話のように、求婚者三人の形ではなかったかと考えられてくるのである。なお、中国四川省西北部のアパ=チベット自治区に伝わる「斑竹姑娘」が『竹取物語』の源泉になっているという説も、このような考えに立てば否定的にならざるを得ない。「斑竹姑娘」の話はすでに五人の求婚者になっているからである。おそらくは近代になってから、わが『竹取物語』の影響を受けた形で伝承され採取されたのではなかろうかと思われるのである。『竹取物語』の本質は、やはりメルヘンである。したがって阿倍御主人・大伴御行・石上麿(物語では石上麿足)など壬申の乱の功臣の名を求婚失敗者として滑稽に描いていることを根拠に体制否定の文学だと規定するのではなく、『日本書紀』の末尾と『続日本紀』の冒頭に活躍する実在人物の名を用いることによって、その時代に実際にあった話として語られていると理解すべきなのであるが、漢籍・仏書に通じた男性知識人が婦女子のために書いたこの作品は、難題の典拠となっている漢籍によってもわかるように、人生を限りあるものと見、限りのない世界を希求する神仙思想の影響を著しく受けていることにおいて、俗世的な物を否定するすぐれたメルヘンに成り得ているのである。『日本古典文学大系』九、『日本古典文学全集』八などに所収。
[参考文献]
田中大秀『竹取翁物語解』、片桐洋一編『竹取物語』(『図説日本の古典』五)、柳田国男『昔話と文学』(『定本柳田国男集』六)、三谷栄一『物語文学史論』、同『物語史の研究』、伊藤清司『かぐや姫の誕生』(『講談社現代新書』三〇六)、君島久子「金沙江の竹娘説話―チベット族の伝承と「竹取物語」―」(『文学』四一ノ三)
(片桐 洋一)
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37. あさまし・い【浅】
日本国語大辞典
よい場合にも悪い場合にも用いたが、現代語では悪い意味にだけ使う)(1)意外である。驚くべきさまである。*竹取物語〔9C末〜10C初〕「取がたき物をかくあさましく ...
38. あさまし‐が・る【浅─】
日本国語大辞典
尾語「がる」の付いたもの)驚きあきれた気持を外に表わす。あさましいと思っている様子をする。*竹取物語〔9C末〜10C初〕「人々、あさましがりて、寄りてかかへ奉れ ...
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40. あ〓し【悪】
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けふの首途(かどで)あしや』と、皆々腹立(ふくりう)して」(4)(人の機嫌や気分が)悪い。*竹取物語〔9C末〜10C初〕「きたなき所の物きこしめしたれば、御心地 ...
41. あし‐とり【足取】
日本国語大辞典
〔名〕(1)足をとらえること。足をつかむこと。*竹取物語〔9C末〜10C初〕「鼎(かなへ)の上より、手とり、足取して、さげおろしたてまつる」(2)相撲のきまり手 ...
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43. あす【明日】
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八「明日香川明日(あす)だに見むと思へやもわが王(おほきみ)の御名忘れせぬ〈柿本人麻呂〉」*竹取物語〔9C末〜10C初〕「翁年七十にあまりぬけふともあすともしら ...
44. あず・ける[あづける]【預】
日本国語大辞典
中を誘(こしら)へて御子の列(つら)に預(アヅ)け給ひ、我が財は、皆汝等が財ぞとのたまふ」*竹取物語〔9C末〜10C初〕「妻(め)の女にあづけて養はす」*看聞御 ...
45. あそ・ぶ【遊】
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46. あたい[あたひ]【価・値】
日本国語大辞典
相当するもの。*彌勒上生経賛平安初期点〔850頃〕「六銖の値(アタヒ)は、沙婆世界に直(あ)ふ」*竹取物語〔9C末〜10C初〕「あたいの金すくなしとこくし使に申 ...
47. あた・う[あたふ]【能】
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48. あだ‐ごころ【徒心】
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49. あつ・める【集・聚】
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*日本書紀〔720〕神代下(鴨脚本訓)「乃ち八十万の神を天高市に合(アツメ)、帥(ひき)ゐて天に昇る」*竹取物語〔9C末〜10C初〕「大伴のみゆきの大納言は、我 ...
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中国近代文学の父であり,偉大な思想家でもある魯迅は,知識人としての苦悩のなかで,中国の「寂寞」を見つめ,自らをも傷つける「革命」を志向する。著者会心の魯迅伝。1965年07月刊
論語徴(東洋文庫)
秦・漢以前の古文辞に対する確固たる自信から孔子の言論を読みとく,論語の注釈のなかでもっとも論争的な注釈書。卓抜した孔子論を展開するとともに,徂徠自身の思想も開陳する。第1巻は,学而,為政,八佾,里仁,公冶長,雍也,述而,泰伯。1994年03月刊
近世和歌集(日本古典文学全集)
年内立春 去年と今年の二本の緒で縒り合わせて掛けて同じ年が一本にまとまらないように、こんがらがってなかなか理解できない春はやって来た。やや趣向倒れの感がある。長嘯子としては機知を働かせたのだろうが。鶯 軒端の梅が咲いていて、一晩中鶯の到来を
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