「きわ」は漢字の「際」と書き、年末や歳末、商家の勘定日などを意味することばである。「きわの日」とは、月末最後の日のこと。京都は昔から商人の町でもある。商いも、日常的な買い物も、代金は売り掛け(後払い)が当たり前だった時代なので、月末といえば、集金や支払いに誰もが頭を痛めていた。そこで、商家のお決まり料理として定着したのが「きわの日」の「きらず」である。「きらず」は切らなくても料理ができるという意味から、豆腐殻の「おから」を意味している。昔の人は「おから」が「空」(から)に通じる音を嫌い、「きらず」と言い換えてしまったともいわれている。それゆえ「お金を切らさないように、きらずを食べる」とか、「財布がからっぽになったから、おからを食べる」とか、「おからをよく煎って食べると、お金が入る」などと、いろんな風に使い回しながら、おもしろおかしく表現してきた。

 京都は豆腐や湯葉などの大豆の加工品がたくさんつくられているので、おからの種類にも気を配る。生湯葉をつくっている店のものが一番きめ細かく、しっとりしておいしいといわれており、材料選びに失敗すると、ぱさぱさして食べられないこともある。おからと一緒に、さつまいもの賽の目切り、にんじん、お揚げ、椎茸、葱などを入れ、だしで炊きあげると、豆腐の絞りかすとは思えないような、おいしい「おぞよ」(おかず)ができあがる。

 おから一つとっても、「だしじゃこの背とはらわたを除いて加えると絶品」とか、「えび豆の煮汁を混ぜるとうまい」などと、いろんな工夫を楽しみながら、本当においしい料理にするあたりが、いかにも京都人らしいといえるのかもしれない。


おからのたいたんの調理中。椎茸の戻し汁やだしじゃこの風味をいかして煎り上げたおからは、おばんざいの代名詞的存在。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 不動産の2019年問題をご存知だろうか。2020年には東京オリンピックが開催されるのだから首都圏の不動産は値上がりするとお考えの方が多いと思われるが、『週刊現代』(2/28号、以下『現代』)によれば「そうではない、大暴落する」と警鐘乱打する。

 その理由として『現代』が上げるのが、「オリンピック後の値崩れを警戒する人たちが、早めに売り抜けようとする」からだ。

 1964年の東京オリンピックの時は高度成長真っ只中だったが、日本も東京も既に成熟期にあるため、巨額の投資をしても東京全体の景気を浮揚させる効果はないとカルチャースタディーズ研究所代表の三浦展(あつし)氏は警告している。

 さらにオリンピック後の会場の跡地には数千戸規模のマンションが計画されているから、供給過多になるのは間違いないそうだ。

 もっと深刻なのが世帯数の減少である。

 「国立社会保障・人口問題研究所が13年に発表した推計によると、日本の世帯総数は、19年の5307万世帯でピークを迎え、35年には4956万世帯にまで減少すると見込まれています」(住宅コンサルタントの平賀功一氏)

 これまでは総人口は減るが世帯総数はかろうじて増加していたが、「縮小マーケットの時代」に突入して住宅市場も縮小するというのである。

 現在の不動産ブームの一翼を担っているのは外国人投資家たちだ。彼らは13年から14年にかけて円安を背景に投資用に新築マンションを買い漁ったが、物件購入後5年するとキャピタルゲインを狙って売り始めるというのだ。

 なぜなら日本の税制は5年以内の不動産の売却益には39%の税がかけられるが、5年以上保有すると税率が21%に下がるからだ。

 榊マンション市場研究所の榊淳司氏は、東京近郊に家があって、もう少し年を取ったら都心のマンションに引っ越そうと考えている人は、家が売れるうちに早めにしたほうがいいとアドバイスする。

 榊氏は不動産価格が下落する町は、立地の実力以上にイメージで高値がついている二子玉川を含めた世田谷区や、豊洲(とよす)、有明(ありあけ)、晴海(はるみ)といった「開発業者たちが頭で設計図を引いたような町」でそれらは町としての魅力が薄いため、価格が落ちるのも早いと見ている。

 先の三浦氏と麗澤大学の清水千弘氏が行なった研究によると、40年時点での地価が10年時点の3分の1以下になると推計されるのは、我孫子市、青梅市、浦安市、杉並区、練馬区、松戸市、多摩市、春日部市などだと言う。

 では大阪を中心にした近畿圏はどうなのだろう。そもそも不動産バブルが起きていないから安心というわけにはいかないようだ。バブルが起きていないということは大阪の経済力が弱いからで、東京で暴落が起きれば間違いなく大阪にもその波は来ると、大阪のマンション建設業者が語っている。

 「梅田の北ヤードなど、大規模な再開発が行われたところは、それなりのバブルが見られたので大きく値を落とすでしょう。中央区、北区、西区の駅近に建ったタワーマンションも危ない」

 近畿で唯一バブルの様相を呈している京都も危ないという。

 「京都と言っても、御所の周辺や下鴨の高級住宅地といった狭い地域ですが……。東京の富裕層がセカンドハウスとして買っており、中には東京の山手線内と同じくらいの坪単価がついているマンションもあります」(先のマンション建設業者)

 バブルが弾ければ大きく値下がりするというのだ。

 大企業の好調な決算や株高、オリンピック景気など、われわれの実感とはかけ離れた「好景気」が演出され、メディアがそれを煽っている。だが、そんなものに踊らされて最後にババを掴むのはいつもなけなしのカネをつぎ込んだ庶民である。

 私は東京の中野で、親から相続した猫の額ほどの土地に住んでいる。バブル真っ盛りの頃、新聞に載る地価の公示価格を見て両親までもが「またうちの土地が上がった」と喜んでいたのを覚えている。

 だが、自分たちが住んでいる土地の値が上がっても、そこを離れる気のない者にはただの数字遊びでしかない。堅実だけが取り柄の両親は、借金して株や不動産に投資することなど考えもしなかったから、バブルは崩壊したが、われわれの生活は何も変わりはしなかった。

 土地を転がすだけでカネがカネを生み、多くの日本人がカネの亡者と化したあげく、莫大な不良債権が残され日本経済は深い傷を負った。

 健忘症の日本人は、あのバブルの時代を忘れてしまったかのようである。大量のカネを刷ってばらまくアベノミクスは、再びバブルを人工的に作り出そうというむなしい営為だが、このままいけば、またあのような悲劇が繰り返されるのは間違いない。そして失われた何十年がまた始まるだけである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 今週はアベノミクスの虚像を剥いだ週刊誌の記事を3本選んでみた。飲んで騒いだ夜の明け方は、はてさてどうなるのか、とくとお考えあれ。

第1位 「アベノミクス恩恵企業に『免税特権10兆円』のカラクリ」(『週刊ポスト』3/6号)
第2位 「消費税に『軽減税率』新聞だけは早くも当選確実」(『週刊現代』3/7号)
第3位 「『週刊現代』も日経新聞も証券アナリストも 株価予想記事はなぜこんなに外れるのか」(『週刊ポスト』3/6号)

 第3位。『現代』に『ポスト』が噛みついている。このところの『現代』の株価予測記事が「無節操」だというのだ。
 たしかに1月31日号の「『株価2万円』『暴落8000円』どっちも本当だ」や2月21日号の「『暴落説』が強まる一方で『株価2万5000円』は本当なのか」というタイトルは、読者を迷わせる。
 『ポスト』は他誌や日経新聞も当たらないと難じているが、基本的に日経は大企業の広報紙のようなものだから、眉に唾して読む必要がある
 『現代』(3/7号)は今週も現役ファンド・マネジャーが匿名で話す「3月、景気と株はこう読むのが正しい」という巻頭特集をやっているが、ここでも株価は「3月にかけて次々と上値を目指す展開が期待される」としながらも、別の人間が「本格的なバブル相場が形成されるほど世界経済が持ち直しているわけではない。突発的に相場が荒れることもあるので、充分注意した方がいいでしょうね」と言っている。
 これではどれが正しいのかわからないではないか。こんな特集をやる意味があるのか、私には疑問だ。

 第2位。ところで17年4月にはさらなる消費税再増税が行なわれるが、そこでは「軽減税率の導入」が決まっている。
 『現代』によれば、米・味噌・しょうゆや塩・砂糖、肉や魚、卵、野菜などは対象になるそうだが、パンやケーキ、冷凍食品などはまだどうするのか決まっていないという。
 それなのに日用品とは思われない新聞が早くもこの対象になることが決まっているというのである。
 読売新聞のドン・渡辺恒雄氏がロビイングした成果だというのだが、そのために政権批判に手心が加えられていたとしたら、国民はたまったものではない。
 新聞は昨年4月に実施された消費税の影響もあって、この1年で読売は約66万部、朝日が約50万部も部数を減らしている。
 今度の消費税増税でも大きく部数を減らすことは間違いないから、必死なのであろう。だが、真っ当な政権批判も大企業批判も出来ない新聞に読む価値などあるはずはない。部数減は、読者がそうした体制ベッタリの御用新聞に成り下がった大新聞への批判からである。
 それに気がつかないのでは、新聞離れはますます進むこと間違いない。
 
 第1位。さて、『ポスト』のアベノミクス批判がますます冴えている。今週は大企業だけが持つ巨大な「免税特権」に斬り込んでいる。
 安倍首相が「3本の矢の経済政策は、確実に成果を上げています」「昨年、過去15年間で最高の賃上げが実現しました」などと吠えているのは嘘だという『ポスト』の主張は、いまさら書くまでもないだろう。
 私の畏友・高須基仁(たかす・もとじ)氏は『サイゾー』の連載で、安倍は「言葉のハリボテ」だと喝破している。
 大企業も「日本の法人税は高すぎるから引き下げろ」と喧伝しているが、これも実は嘘で、『ポスト』によれば日本の中小企業を中心に7割以上が法人税を払っていないし、利益を上げている企業でも、実際の税率は非常に低いとしている。
 たとえば、連結決算で2兆4410億円もの税引き前純利益となったトヨタは「5年ぶりに法人税を納付した」が、実際に負担した税率は22.9%、キヤノンが27.6%、武田薬品工業は18.8%でしかない。
 本来はもっと多くの税収があるのに10兆円ものカネが消えているというのだ。それは「日本の法人税には数多くの税制上の“特典”があり、その中でもとくに不公平で不透明なのが租税特別措置(租特)と呼ばれる特例です」(峰崎直樹・元財務副大臣)。この租特を使って法人税を大きく引き下げることができるというのである。
 そのカラクリに斬り込んだのが国税庁OBで税務会計学の権威である富岡幸雄・中央大学名誉教授だ。

 「法律で規定されている88項目ある租税特別措置の適用状況(2012年度)を見ると、適用件数が132万3396件で、それによる減税相当額は総額1兆3218億円。しかも、その半分近い47.72%の6308億円は資本金100億円超の大企業703社への減税だった」

 まさに大企業優遇の制度だ。また租特のなかでも特に減税効果の大きい「試験研究費の税額控除」でトヨタは約1342億円の減税を受けているというのだ。
 こうした数々の特典を受けているにもかかわらず、企業はこうしたことを公表するのを嫌がり、既得権としているのだ。

 「2年後に消費税を上げるならば、一部の企業に偏った減税である租特にメスを入れて税制の公平を取り戻さなければ国民の理解は得られない」(森信茂樹・中央大学法科大学院教授)

 「法人税減税と租特の減税特例を同時に与える不公平税制を極大化させる」アベノミクスは、『ポスト』の言うとおり「欺瞞」でしかない。国民はもっと怒って当然だ。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 ゲームの後塵を拝して、漫画が売れない時代になった、とされて久しい。業界にとって怖いのは、若者のあいだで「漫画の読み方がよくわからない」と言い出す者まで現れている事実だ。この時代、紙でなく画面上で漫画を読むビジネスの行方が気になる。まずは単純に「漫画が好き」というユーザーを増やしていく必要があるのだから。

 気軽に読める「無料」の漫画アプリが花盛りとなっている。『LINE マンガ』、『マンガ全巻無料』(Amazia)、『少年ジャンプ+』(集英社)……。かつてスマホは、「無料で遊べるゲーム」という発明で巨大な市場を創出した。漫画でも同様のことができるのだろうか。新規参入が引きも切らない、期待の寄せられている分野だ。

 最も知名度が高いのは、DeNAが運営している『マンガボックス』であろう。無料であるだけに、過去作に光を当てたアプリが多い中、人気作家の新作が読めるのがウリだ。『金田一少年の事件簿』のスピンオフ『高遠(たかとお)少年の事件簿』(現在は連載終了)など、コンテンツの質は高い評価を受けた。一方、作家の知名度ではなく、オリジナルの新作で勝負しているのが『comico』(NHN PlayArt)。漫画のコマがスマホ向けに特化して縦割りとなっているのが大きな特徴で、順調にヒット作も育っている。

 そして2014年には、ソフトバンクグループのSBイノベンチャー社が『ハートコミックス』で参戦。漫画家の赤松健氏が立ち上げた会社「Jコミ」と連携した。Jコミは、漫画の無料公開の先駆け的存在(現在、サービス名は『絶版マンガ図書館』となっている)で、なかなか強力なタッグとなる。これら0円漫画アプリは、いわゆる「電子書籍」のビジネスモデルと切り離された独自の道を歩みつつあるようだ。今後の行方が気になる。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 まもなく東日本大震災から4年が経過する。

 その被災地で今、心配されているのが生活不活発病だ。

 生活不活発病は文字通り、「生活」が「不活発」になったことが原因で、全身の機能が低下する病気。身体を動かさなくなると、筋肉や骨が衰え、心臓や呼吸器などにも影響が出るようになる。

 そのままにしておくと、歩けなくなったり、寝たきりになったりすることもある。また、身体だけではなく、心や頭の働きも低下するため、うつ病や認知症を発症することもある。とくに高齢者に多く見られ、廃用症候群とも呼ばれている。

 生活不活発病かどうかは、次の7項目でチェックする。

(1)屋外を歩くこと
(2)自宅内を歩くこと
(3)身の回りの行為(入浴、洗面、トイレ、食事など)
(4) 車いすの使用
(5) 外出の回数
(6)日中どのくらい体を動かしているか
(7)家事(炊事、洗濯、掃除、ゴミ捨て、庭仕事など)

 これを災害前と現在で、自分や家族がどのような状態にあるかをチェックしていき、結果、身体機能が低下している場合は生活不活発病のリスクが考えられる。

 災害発生時は、避難所では動きたくても動けない状態になりがちで、生活不活発病が発症しやすい。しかし、避難所から出て、仮設住宅などに移ったあとも、中長期で進行するので注意が必要だ。

 それまで仕事をしたり、日常的に畑作業や庭いじりをしていた人も、災害に遭うと仕事や畑を失い、することがなくなってしまうことがある。一日中、狭い仮設住宅でテレビを見続けたり、周囲への遠慮などから、身体を動かさない状態が続くと、徐々に筋肉や骨など全身の機能が衰えるようになる。

 その影響で、余計に外出したり、家事をしたりするのが億劫になり、さらに体を動かさなくなる悪循環にはまってしまうのだ。

 いったん生活不活発病になると、改善には時間がかかり、場合によっては寝たきりになってしまうので、早期発見・早期対策で体を動かさなくなる悪循環を断ち切ることが大切だ。そのためには、生活が不活発になった原因を明確にして、それを取り除いたり、家庭や地域で「参加」できる場をつくったりする必要がある。

 たとえば、「仮設住宅には手すりをつけて、立ち上がりやすくする」「お祭りやイベントを開催して、出かける場所をつくる」「家事やプランターでの野菜作りなど、役割や生きがいをつくる」といったことが、生活不活発病の予防・改善になる。

 やりたいことが見つかると、自発的に体を動かすようになり、生活不活発病の症状も改善していき、身体機能も回復していく。

 あれから4年。確実に時は流れた。しかし、復興は遅々として進まず、いまだ約23万人が仮設住宅などでの避難生活を強いられている(復興庁「全国の避難者等の数」2015年1月15日現在)。

 震災は、尊い命や暮らしの基盤である住宅を奪っただけではなく、生活不活発病の蔓延に見られるように、中長期にわたって、そこで暮らす人々をジワジワと追い詰めている。

 これ以上の悲劇が起こらないように、復興のスピードを上げて、被災した人たちが一日でも早く元通りの生活を取り戻せることを願いたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 残念なことに、青森県の平均寿命は全国最下位であり、この不名誉を返上するのが県をあげての重要課題となっている。そこでNHK青森放送局では、「脱!短命プロジェクト」を掲げ、様々な取り組みを番組で紹介している。『元気あっぷる体操』は、その過程で生まれた健康増進のための体操だ。タイトルは青森県の名産「リンゴ」と「元気アップ」をかけているようだ。

 白羽の矢が立ったのは、青森大学新体操部。青森大学といえば、お聞き覚えがある方も多いだろう、アクロバティックな動きで近年話題になっている「男子新体操」の王者だ。十和田市在住のミュージシャン・桜田マコトによるテーマ曲『だから、そのままで』に乗せて、振付を担当した。もちろん、男子新体操に見られる激しい動きはなく、どんな世代にも無理のない体操になっている。

 2015年1月13日放送の『たけしの健康エンターテインメント! みんなの家庭の医学』(テレビ朝日系)で、「膝によく効く」と紹介されたことから、全国的な注目を集めた。特に冬につらい膝の痛みは、すり減った軟骨が原因だが、その周囲の筋力を鍛えることで改善されるという。『家庭の医学』での「元気あっぷる体操」は、膝への負担が軽い屈伸の部分が特に取り上げられることになった。念のためだが、この体操は膝に限らず、あくまで全身運動である。興味があれば、NHK青森のホームページで見本動画を確認することができる(http://www.nhk.or.jp/aomori/taiso/movie.html )。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 政府は、介護報酬を2015年度から全体で2.27%引き下げる。介護報酬は3年に1度改定されるが、今回は9年ぶりのマイナス改定となった。

 介護報酬とは「介護保険サービスの事業者が、提供したサービスに応じて受け取るお金」のこと。その1割を利用者、残りを介護保険料と税金が半々で賄う仕組みだ。

 引き下げとなったのは、慢性的な財政難に加え、安倍晋三総理が「消費税率の10%への引き上げ」を先送りしたからだ。

 高齢化の進展で14年度の介護保険の総費用は約10兆円に達した。これが団塊世代がすべて後期高齢者になる25年には倍増する見通しだ。介護職員も今より100万人増やす必要があるという。膨れあがる介護費用の抑制はやむを得ない措置だろう。

 介護報酬の引き下げを後押ししたのは、財政当局による「介護事業者の利益率が平均8%と、一般の中小企業の利益率(2~3%)に比べて高い」「施設で介護事業を請け負う特別養護老人ホームは、平均3億円もの利益を内部留保として蓄えている」といった指摘だ。要は「儲けすぎではないのか」ということだ。「儲けすぎ」との指摘に対し、介護事業者の間からは「ギリギリの運営でやりくりしている事業者も少なくない。一括しての報酬の引き下げはサービス低下につながりかねない」との反発も聞こえてくる。

 介護難民が出ないことを願うばかりだ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 「学生時代に力を入れたこと」の略語。就職活動中の面接やエントリーシートなどで、かなりの高確率で企業側から訊ねられる質問であるらしく、のんべんだらりと4年(もしくはそれ以上)の大学生活を送ってきた多くの学生は、コレを無理矢理捻り出すのに一苦労なのだという。

 もちろん“正解”は社風の硬軟、面接官との相性、面接官のその日の気分、プレゼンする側(学生側)の表現能力……などによって異なってくるのだが、そもそもガクチカが就活の鉄板となること自体、戦後日本の教育制度の矛盾を象徴しているのではないかと筆者は考える。

 じつのところ、ガクチカに対する“完璧な正解”は一つだけある。「学業が忙しくて、ほかのことに力を入れるヒマがありませんでした」だ。つまり企業側は端っから「大学は勉強する場所ではない」と断定し、「ガクチカは学業です」という解答を放棄しているのである。それどころか「大学で勉強ばかりしていたヤツは要領の悪い堅物」のレッテルを貼っているフシさえ見受けられる。まったくもって嘆かわしい話ではないか……なんて戯れ言を、就活中「学生時代はテニスサークルのキャプテンを務めながら、ジャズのプロドラマーのボウヤ(アシスタント)もやってました」程度の凡庸なガクチカしか“作る”ことができなかった筆者が語る資格なんぞ、まったくないのだが(笑)?
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


<<前へ       次へ>>