中秋の名月にあたる旧暦8月15日は十五夜である(2012年は9月30日)。京都の月見団子は、白米をひいた新粉(しんこ)を練って里芋の形に蒸し上げた団子に、小豆のこしあんを巻くように添えたものである。この月見団子と一緒に、薄(すすき)や萩(はぎ)を飾り、御神酒(おみき)を供えて月を祭る。本来は収穫したばかりの里芋やその葉茎の芋茎(ずいき)を供えたので、これが芋名月(いもめいげつ)のゆえんである。
日本人が月を愛(め)でる慣習は古く、日本最古の物語といわれる竹取物語ではかぐや姫が月を眺める場面が出てくる。平安時代ごろには貴族が宴や舟遊びに興じ、中世の観月は池の水面や杯の酒に月を映して楽しんだそうである。中秋の名月があいにくの天気でも、古人は、雲に隠れていれば無月(むげつ)、雨が降れば雨月(うげつ)といい、折々の変化が一つの面白みをもたらした。
満ちて欠けてゆく月の楽しみ方もあり、中秋の前日を待宵(まつよい)、翌日は十六夜(いざよい)という。秋の観月は旧暦9月13日の十三夜(じゅうさんや)もある。この日は後の月見(のちのつきみ)という。秋に収穫された大豆や栗を供えたことから、豆名月(まめめいげつ)や栗名月(くりめいげつ)とも呼ばれている。