自民党新総裁。父は安倍晋太郎、母方の祖父は岸信介という政界のサラブレッドだ。5年前に総理大臣に就任するも、体調を理由に1年でその座をほっぽり出した過去を持つため、自民党総裁選では当初、石破茂、石原伸晃(のぶてる)に続いて3番手と見られていたが、尖閣諸島や竹島から吹くナショナリズムの風に乗って、総裁選の決選投票で石破氏に逆転勝利した。
だが、大方の国民の気持ちは『週刊ポスト』(10/12号、以下『ポスト』)の「『結局、安倍かよ~』というとてつもない空虚感」に代表されるのではないか。
さらに国民が安倍総裁に不安を感じるのは、彼がウルトラ保守だからでも憲法改正論者だからでもなく、彼の“持病”にある。
『週刊文春』(10/11号、以下『文春』)によれば、その病は厚労省が難病指定している潰瘍性大腸炎で、安倍総理の秘書官だった井上義行氏は、「辞める二ヶ月ほど前から、総理執務室の後ろにベッドルームをつくり、私服を着た医師を入れて毎日点滴を打っていました。トイレに行く回数は、一日、何十回ではきかないくらい」だったと語っている。
次の総選挙で自民党が勝てば2度目の安倍総理誕生となるが、激務に耐えられるのだろうか?
そんな不安を払拭するため「アサコール」という新薬で病気はほぼ完治したと、安倍氏は総裁選の決起集会で3500円のカツカレーを完食する前代未聞のパフォーマンスを見せたのである。『ポスト』は「いつからこの国では、カレー完食が『総理・総裁の条件』になったのか」とあきれ果てている。
『文春』は、首相辞任の際に発表したのは潰瘍性大腸炎ではなく機能性胃腸障害だったことに着目し、腸疾患の権威である大学教授の言葉をひいて、潰瘍性と機能性は切り離して考えるべきだと指摘。「アサコール」は潰瘍性は抑えられても機能性のほうが発症するリスクはあると追及する。
「潰瘍性大腸炎も機能性胃腸障害も、完全に治る病気ではないのでコントロールすることが大切です。これらは、がんばりすぎる人がなる病気。患者さんには百点ではなく七十五点合格主義を勧めています」(鳥居内科クリニック・鳥居明院長)
難問山積する中、75点主義でのんびりやられてはたまらないが、さりとてがんばりすぎて、首脳会談の最中に何度も中座してトイレに行っていたのでは、まともな話し合いなどできはしまい。安倍総裁最大の敵は「獅子身中の虫」にあり。