なんとなく肌寒いことをいう。すき間風のように、寒いと感じる前に通り過ぎてしまう冷気は、冬の気配のようなものである。もしや風邪かなと不安を抱きつつ、「背中あたりがすこすこするなぁ」などと、思わず口をついて出る。
冬の京都は、独特の冷え冷えとした時期が長く続く。とにかく底冷えが厳しい。京都の市街地をぐるりと取り囲んだ山々の寒さが、保津川や賀茂川、高野川といった川づたいに下りてきて、市の中心部にあたる盆地の底の辺りに、冬の間はずっと冷気になってとどまっているからだという。
北国の肌が痛いような寒さとは違い、足元からじわりじわりと骨の髄までしみこんでいくような寒さは体がきしむようで、想像以上につらいものである。初冬につぶやく「すこすこする」ということばには、当分そばにとどまる冷気に「お手柔らかに」とあいさつをし、冬の到来を迎え入れるような新たな気分が含まれている。