1960年代を代表するCMコピーに「大きいことはいいことだ」というのがあった。高度成長、大量消費──なにもかもが右肩上がりの時代だった。
40年以上が過ぎ、いまや「小さいことはいいことだ」ということらしい。「コンパクトシティ」は、住宅地や商店街、行政機関、医療機関などを中心部に集約化し、効率的な街づくりをしようという構想。背景には、人口減少や高齢化の進展、行政の財源不足などがある。
いろいろと便利なことは間違いない。歩いて通える範囲内に商店や病院、福祉施設などがあれば、車を運転できないお年寄りのアメニティーは改善する。地方で顕在化する「買い物難民」の対策にもなる。地方自治体はどこも財政事情が悪化しているが、除雪や道路整備、上下水道整備、ゴミ収集といった行政経費の節約にもつながる。
すでに青森市がJR青森駅前の再開発に合わせて、富山市も路面電車環状線を開業させるなどして街づくりに反映させようとしている。
新たに取り組もうとしているのが岩手、宮城、福島など東日本大震災の被災地だ。津波が押し寄せた沿岸部では、高台や内陸部に集団移転を計画・検討しているところが少なくない。東北の沿岸部では、「人口減少」「高齢化」が震災前からの大きな課題だったが、新天地でコンパクトシティに取り組むことで、こうした課題も克服しようというわけだ。