田中真紀子文部科学大臣がまた一騒動起こした。秋田公立美術大、岡崎女子大、札幌保健医療大の3大学の新設を認可しなかった「事件」のことだ。「待ってました」とばかりにワイドショーなどは連日大きく取り上げた。
結局、田中大臣が全面撤回して3大学は予定通り、来春開校の運びだ。だが、その問題提起には傾聴すべき点が少なくない。
「大学はたくさん作られてきたが、教育の質が低下している」
騒動の中で田中大臣はこう指摘した。乱立と質的低下の背景にあるのが規制緩和だ。まず90年代初頭に当時の文部省がカリキュラムや教員編成などを自由化。「学部の多様化」に動いた。その後、2000年代に入り、今度は小泉内閣が認可を「事前規制」から「事後チェック」に変更。新規参入の壁をさらに取り払った。
数字が如実に物語っている。通信制を除く大学の数は2012年現在で783校。20年前の約1.5倍に膨れあがっている。ところが、18歳人口は逆に1992年の205万人が2012年には119万人に減少しているのだ。学生数が減っているのに大学数が増えるという「経済原理」を無視したことが成り立っているのだ。質が悪ければ、学生も集まらない。大学の中には定員割れで経営難に陥るところも少なくない。
国公立大はもちろん、私立大にもわれわれの税金が投入されていることを忘れてはならない。