著作権法の一部が改正され、10月1日から違法ダウンロードの刑罰化が実施された。
すでに2009年の改正で、インターネット上に違法にアップロードされたものと知りながら、有料で配信されている音楽や映像などをダウンロードすることは、個人が楽しむために使うものでも禁止されるようになった。ただし、罰則規定はなく、これまでは刑事罰に問われることはなかった。
しかし、今回の改正で、有料配信されているものについての違法ダウンロードは刑事罰に問われることになり、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方が科されることになったのだ。
違法ダウンロードの刑罰化は、著作権保護を求める日本レコード協会などの圧力もあり改正されたが、憲法で保障されている表現の自由、情報へのアクセス権の侵害につながるとして問題視する声もある。また、改正の背景には、日本やアメリカを中心に秘密裡に交渉が進められてきたACTA(アクタ;模倣品・海賊版拡散防止条約)との関係が指摘されている。
ACTAはブランド品のコピーやDVDの海賊版ソフトなどの偽造品取引やネット上の著作権侵害を世界規模で取り締まることを目的とした協定だが、その裏には国や多国籍企業など権力側に都合の悪い情報を規制する狙いがあるとの見方もある。
ACTAの条文は漠然としており、拡大解釈によって規制が強化されたり、市民の自由が脅かされる恐れがあるとして、欧州では大規模な反対運動が巻き起こっている。そうした流れの中で、EU(欧州連合)はいったん署名したACTAの批准を欧州議会で見送る決断をした。
EUが否決したACTAを、日本ではほとんど議論せずに、この9月に署名国の中で真っ先に批准したわけだが、そのACTAでも違法ダウンロードの刑事罰化は規定されていない。世界的にみれば、それほど今回の著作権法の一部改正は異常なことで、権力によるネット規制が進むのではないかと不安視する声が上がっている。