景気低迷や産業構造の変化などで余剰人員を抱える企業に対し、政府が助成する制度のことをいう。企業に対し、従業員の「解雇」ではなく、「休業」「出向」「教育訓練」で雇用を維持してもらうことが、この制度の目的だ。要は失業予防策。助成金は休業手当や賃金の一部などに充てられる。
同助成金を巡っては、2008年のリーマンショックを受け、政府はその支給要件を緩和した経緯がある。それを、10月からほぼもとの要件に戻した。例えば、対象企業を「過去3か月間に、生産量・売上高がその直前の3か月または前年同期と比べて5%以上減少」に限っていたのを「前年同期と比べ10%以上減少」といった具合だ。元に戻した理由について厚生労働省は「経済状況の回復」を挙げている。
確かに助成対象は2009年7月の252万人が12年9月には31万人まで減少した。
しかし、である。ギリシャ危機に端を発した債務危機は世界中に波及し、日本もその渦に呑み込まれそうな気配だ。パナソニック、シャープなどの名門企業も多額の決算赤字を抱え青息吐息だ。
一方で、政府は11月16日発表した11月の月例経済報告で、景気の基調判断を4か月連続で下方修正した。雇用環境や個人消費は悪化するということだ。この局面での雇用調整助成金の支給要件の引き上げについて首をかしげる向きも少なくない。