はじめて労働者派遣法が施行されたのは1986年。法律ができた当初は、通訳や秘書など専門的な業務にかぎって認められた派遣労働だったが、経済界の求めに応じて対象業務は拡大され、1999年に原則的に自由化される。さらに2003年の改正では派遣期間が1年から3年に延長され、それまで規制されていた製造業派遣や仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ登録型派遣まで許可され、雇用側に都合のよい法律に変えられていった。
労働基準法では労働者の生活を守るために安易な解雇を禁じており、正規雇用の労働者は「企業の業績が悪いから」などの理由では解雇できない。しかし、そうした法律で守られない派遣労働者が増えたことで、リーマンショック時には企業の一方的な都合で大量に派遣切りが行なわれ、2008~2009年の「年越し派遣村」に象徴される社会問題が起こる。
労働者を使い捨てにする企業の横暴に歯止めをかけるために、見直しが検討されていたのが今回の労働者派遣法の改正だ。当初は製造業派遣や登録型派遣の原則禁止を求める厳しい内容となっていたが、東日本大震災などを理由に経済界の巻き返しにあい、この条文が削除された改正案が、2012年3月に成立。10月1日に施行されたが、以前の法律と変わったのは、「30日以内の日雇い派遣の禁止」「派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(マージン率)などの開示」「偽装請負などの違法派遣を行なった企業への対処」などで、当初の法律案からは大幅に後退した骨抜きの内容となっている。
近年、生活保護受給世帯のなかで、働く能力があるのに失業によって生活が困窮した現役世代が増えている背景には、こうした労働法の不備があることも見逃せない。