奥様がめでたくご懐妊。しかしいまどきの市町村、とくに首都圏では産院の確保もままならない。また産褥期(さんじょくき=出産後、母体が回復するまでの期間)のことを考えると、仕事で忙しいパパ以外の手が必要になりそうだ。必然的に老父母の力を借りることとなり、「里帰り出産」が多くなるわけである。これに対して、なんとか自宅の生活圏で出産しようという動きが「マイタウン出産」だ。この考え方は、一つの出産スタイルを示すだけでなく、夫や地域社会の役割を見直すといった意味も含まれる。
里帰り出産には、子育ての大切なスタート時に不在だった父親が、わが子と積極的に向き合うタイミングを逸するなどのマイナス面もある。産前・産後を夫婦と地域の力でクリアすることのメリットは存外に大きい。とはいえ、育児休暇などのシステムもまだ未成熟で、そもそも出産をめぐる選択の幅があまりにかぎられている。少子化傾向を脱却するためにも、行政をあげて状況の改善に取り組むことが望まれる。