社会保障制度改革推進法は、2012年8月に成立した「社会保障・税の一体改革関連法」のひとつで、国民生活の安心よりも財源論に力点を置いて医療や介護、年金などの社会保障制度を見直すことを目的とした法律だ。
医療も介護も「保険給付の対象となる療養の範囲の適正化」が謳われているが、国の文書で「適正化」といえば削減・縮小を指すことはいうまでもない。基本方針でも、憲法25条で保障している生存権に対する国の責務を放棄することを宣言しており非常に問題の多い法律だ。
とくに医療分野では、これまでの改革では必ず使われてきた「国民皆保険の堅持」が消え、「医療保険制度に原則として全ての国民が加入する仕組みを維持する」という言葉に差し替えられている。「原則として」という言葉は例外を作ってもよいことで、国の都合で「この人は保険に入れなくてもよい」ということが行なわれることも否定できない。その結果、国民の健康に寄与してきた国民皆保険が崩壊し、必要な医療が受けられなくなる危険性が指摘されている。
同年2月、民主党政権が閣議決定した「社会保障・税一体改革大綱について」では、基本方針としてはむしろ、社会保障の機能強化も打ち出されていた。ところが、自民公明との3党合意で消費税増税法を通すために、バーターとして自民党の「社会保障制度改革基本法案」をほぼ丸のみしたのが今回成立した法律だ。つまり、国民生活を破壊しかねない悪法は、民主党だけではなく、自民党、公明党の3党の合意のもとに成立したことを覚えておきたい。
ただし、今後の社会保障の具体的な制度作りは、有識者で組織される社会保障制度改革国民会議での話し合いで決められることになっている。そのメンバーには、弱者を見捨てない良識のある審議が行なわれることを期待したい。