金融政策の一つ。政府が物価上昇率を目標に掲げ、中央銀行(日本の場合は日本銀行)にその達成を求めるものだ。いま注目を集めているのは、11月に自民党の安倍晋三総裁がこう言及したからだ。
「建設国債をいずれは日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出て行く。景気にはいい影響がある」
安倍総裁としては、日銀が建設国債を買って市場に出回るお金を増やすことで、物価目標を達成しようという算段。ちなみに自民党は2012年衆院選の政権公約で、2%の物価目標を設定。2012年度の建設国債発行額は5.9兆円である。
そもそも財政法は日銀の国債引き受けを原則禁じている。戦前の反省があるためだ。
1932(昭和7)年、世界恐慌からの脱出のため、日銀に国債を引き受けさせた。その結果、軍事費など、歳出の膨張に歯止めがかからなくなり深刻なインフレを招いた。
安倍総裁は、日銀に直接、国債を引き受けさせるのではなく、通常の金融調節手法である「買いオペレーション」での引き受けだと説明している。だが、買いオペであるにしても引き受けは引き受け。友党の公明党からも「日銀が引き受けるのは慎むべきだ。建設国債も国債なので一定のルールを保つ必要がある」とクギを刺す声があがっている。
これに対し、安倍総裁は意気軒高。前述の発言を市場が好感し、株高、円安に振れたからだ。現在の白川方明(まさあき)日銀総裁は来年4月に任期切れを迎えるが、安倍総裁は後任について、「インフレ目標に賛成してくれる人を、政権をとったら選びたい」と日銀にプレッシャーをかけている。