専用端末やタブレット、スマートフォンで読む電子書籍の動向が注目されている。世界的な「紙の本」の危機はよく語られ、実際に消費は冷え込んでいるが、一方で電子書籍の時代とやらが「来そうでなかなか来ない」。そんな日本では、各出版社ともいろんなチャレンジを試みている。2012年は、スマホ全盛の中、デジタルと紙の本とをハイブリッドさせたユニークな企画が注目を浴びた。いわゆる「AR本」である。
「AR」とは「拡張現実(Augmented Reality)」の意味。スマホのカメラを通して本を見ると、イラストや文字などが現実世界に浮かび上がる。たとえば、『ミライ系NEW HORIZONでもう一度英語をやってみる:大人向け次世代型教科書』(東京書籍)。中学校の英語の教科書に登場したキャラクターたちが成長した姿(ちょっと「萌(も)え」要素あり)で現れ、英語で会話をするという趣向だ。読み流しやすい電子書籍という形態は、参考書のような注視したい本の場合、しっくりこない世代も多い。AR本は、紙の本のよさは残しつつ、その「弱点」である「音声」「動き」を補うかたちとなっている。