長引く不況で節約志向が進んでいることに加えて、昨年の東日本大震災時のインフラや流通の混乱の影響で、自宅で食事をする「内食」を好む傾向が続いている。その流れの中でブームになっているのが、ファミリーレストランやファーストフードなどのメニューを自宅で再現する「おうち外食」だ。
 火付け役になったのは主婦向けの情報雑誌で、味や盛り付けが外食チェーンの商品そっくりになるレシピを紹介したところ、主婦層にウケて、ネットのレシピサイトなどを通じて一気に広まった。家にある材料や調味料で、できるだけ外食チェーンの味に近づけたり、自分なりのアレンジを加えたりして、家で外食気分を楽しんでいるという。
 おうち外食は家庭での食事が見直されていることの表れである一方、食卓がフードコート化しているという見方もできる。厚生労働省の「平成21年度 全国家庭児童調査結果」によると、1週間のうち家族そろって一緒に夕食を食べるのは、「2~3日」が36.2%で最も多く、「毎日」と答えたのは26.2%しかいなかった。
 父親不在の夕食は、子どもが喜ぶファミリーレストランやファーストフードのメニューになりやすい。家族団らんの風景が失われつつある今、おうち外食のブームを喜んでばかりはいられない。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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