メッセージ型図鑑は単に「新型図鑑」とも呼ばれる。従来型の子ども向け図鑑は、「動物」や「乗りもの」といったカテゴリーしかなく、カタログのような体裁でデータも「数字だけ」が多かった。そんな固定観念を大きく変えたのは、2009年に小学館が出版した『くらべる図鑑』であろう。たとえば、見開きページにさまざまなサイズの動物イラストをひとまとめに載せる。同じページには小学生の全身像もあり、キリンやパンダとの大きさが直感的に比較できるわけだ。子どものハテナに応えるかたちで、編者が「読み方」を提供するのが、この手の図鑑のキモである。
出版界で図鑑は「年間3万部売れればヒット」とされていたが、メッセージ型図鑑は10万部単位の売り上げを連発し、2012年には各社競合の状態となっている。子どもの図鑑にこれほどの伸びしろがあるとは考えられていなかったが、大人でも欲しくなる切り込んだ知的演出が購入に結びついた。実際、版元には親子でいっしょに楽しんだという声が多く寄せられているそうだ。