自民党の安倍晋三総裁は新政権を「危機突破内閣」と位置づけた。そこで、想起されるのが「失われた20年」という言葉である。
バブル崩壊後の日本経済の停滞のことをいう。実際、2011年の名目国内総生産(GDP)は約470兆円で、1991年と同水準でしかない。この20年、GDPはほとんど成長していないのだ。
失われた20年といっても前半と後半でその原因は異なる。最初の10年はバブル崩壊のツケ、金融機関の不良債権問題が足枷(あしかせ)となった。後の10年は、少子化に伴う生産年齢人口(15歳―64歳)の減少が原因だ。
生産年齢人口の減少は医療や年金制度にも大きな穴を開け、社会保障は危機的状況に陥った。
将来の老後に不安を抱くなら、財布のヒモも固くなる。その結果、消費が抑制され、成長率がさらに悪化するという悪循環だ。
人口問題は人間の営みに関わる問題だけに、その解決は容易ではない。失われた20年がさらに30年、40年と続くシナリオも取り沙汰されている。まさに危機的状況だ。