2006年に施行された障害者自立支援法は、「保護から自立へ」の掛け声のもと、福祉サービス費や国が負担する障がい者の医療費を抑えることに力点が置かれたものだった。とくに収入を得るすべを持たない障がい者からもサービス利用料の自己負担(原則1割応益負担)を求めたことへの批判が大きく、各地で生存権の侵害だとして違憲訴訟が起こされた。
2009年の政権交代によって自立支援法の見直しが決定。障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備をはじめ、障害者制度の改革を行なうために「障がい者制度改革推進会議総合福祉部会」が設置された。ここでは当事者の意見を取り入れながら、新しい障害者制度を作るための骨格提言が行なわれた。そして、自立支援法は廃止され、これにかわって2012年6月に「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」が成立した。
施行は2013年4月(一部は2014年4月)からだが、できあがった法律は骨格提言に盛り込まれていたサービス利用料の無料化などが見送られ、根本的な部分は自立支援法とほとんど変わっていない。障がい者団体などからは落胆の声が聞かれるが、その一方で、それまで制度の谷間で除外されてきた難病患者などが、障害福祉サービスを利用できるようになったことは一歩前進だ。
障害や難病で苦しむ人が、社会や地域で尊厳をもって暮らしていくためには、骨格提言で示した理念を法律の運用段階でいかに具現化できるかにかかっている。そのためには当事者や市民のねばり強い活動が必要になるだろう。