スペイン、アラゴン州にあるボルハという街が、2012年にメディアの注目を集めた。現地を訪れる観光客も急増。お目当ては、サントゥアリオ・デ・ミセリコルディアという街(実はボルハから少し離れている)の教会にあるフレスコ画である。イエス・キリストの顔が描かれた作品の題名は、『この人を見よ(エッケ・ホモ)』。新約聖書『ヨハネ福音書』で、イエスの処刑を命じた提督の言葉から来ている。
1910年、画家エリアス・ガルシア・マルティネスが、この地で休日を過ごした縁から筆をとった作品。教会の柱に直接描かれたものであるため、丁重な保存もままならず、近年傷みがひどくなっていた。そこで地元の高齢のご婦人、セシリア・ヒメネスさんが善意から修復を試みたのだが、これが深刻な事態を招く。女性は絵の素人というわけではないものの、高度な技術は持ち合わせていなかった。なんとも素朴な、お猿さんのような絵に仕上げてしまい、もともとの絵の印象は失われてしまったのだ。現在は、再度修復する動きと、話題になったのでこのまま保存すべきという意見がせめぎ合っている状態だ。