京都市北区の上賀茂特産の京野菜、酢茎菜(すぐきな)を塩漬けにして発酵させた漬け物で、千枚漬けと並び、京都の冬を代表する漬け物である。乳酸発酵特有の上品な酸味と香りがあり、そのままお茶漬けにしても、少し醤油(しょうゆ)を加えてご飯といただいてもよく合い、癖になる風味である。昔は京都の町中まで上賀茂の農家の婦人が直接売りにきていたそうで、このすぐき売りを「きーやさん」と呼んでいたという。
酢茎菜は蕪(かぶ)の変種で、400年あまりも栽培されてきた品種であるが、その来歴は詳しくわかっていない。賀茂川の中州に自生していたなどという説もある。
晩夏に種をまき、12月前後に収穫が行なわれると、いたみやすいので手早く漬けこみ作業が行なわれる。葉を付けたまま皮をむき、強く重石をかけながら塩漬けにする。それを食べるしばらく前に取り出し、今度は加温している室(むろ)に入れ、ここで乳酸発酵を一気に進める。すると、淡く黄みがかった色合いに変わり、独特の香りと旨味(うまみ)が漬け物に加わるのである。
すぐきは、菜っ葉を細かく、根部は細かくしすぎないように切ったら、ちりめんじゃこと混ぜ、白ごはんやお茶漬けで食べるのがおいしい。徐々に酸味が強くなるため、好みで醤油を加えると食べやすくなる。