市川猿翁(いちかわ・えんおう)丈が猿之助(えんのすけ)時代に始めた「スーパー歌舞伎」は、現代的ともいえるケレン味のある演出で一世を風靡(ふうび)した。その第一作『ヤマトタケル』の台本を書いたのが梅原猛(うめはら・たけし)氏。哲学者として著名な氏が、『ムツゴロウ』などの「スーパー狂言」三部作を経て、2013年1月に発表した新作能が話題になっている。タイトルは『世阿弥』。「スーパー能」というふれ込みで、4月に東京・国立能楽堂で上演される。
2013年は、室町時代に能を大成した世阿弥の生誕650年に当たる。記念すべき年にお披露目となる「スーパー能」第一弾は、世阿弥の息子元雅の死の謎をめぐる内容で、能の未来への希望などが描かれる。能の舞台で使うことのなかった照明の登場、従来の古語を脱した現代語による展開など、新しい演出が「スーパー」たるゆえんである。