「はんなり」を辞書で引けば、意味は「明るく陽気で華やかなさま」とあり、「はんなら」とも、と記されている。京都で聞く「はんなり」という語意には、もう少し静かで和らぐような、それでいてまぶしいような、そんな印象が浮かんでくる。
着物でいえば、華やかな模様や色合いというよりも、身につけた人の所作を通して感じられる、静かな明るさのようなものであろうか。もともと「花なり」から「はんなり」へと変化したことばで、中世後期から用いられてきた。江戸中期の歌謡集『落葉集』の早咲梅踊には、「開き初めたる早咲梅のはんなりと」(「日本国語大辞典」より)とある。「花なり」の花とは、まさしく早咲きの梅の印象である。三寒四温の春を待つ時期に見つけるからこそ、そのもの以上に強く明るさを感じ取ることができるのだ。
京都の人に好きな季節をたずねてみると、意外にも「早春」と答える人が多い。京都は市内でも日本海側の影響を受けやすいため、3月でもまだ寒く、底冷えも厳しい。だからこそ、ふとして足元や庭木に芽生え始めた色づく春を見つけると、なんともやさしく華やいだ気持ちになる。それがはんなりとしていて、心地よいものなのである。