いまや多くの読書好きが注目する「本屋大賞」だが、「新書大賞」はご存じだろうか。中央公論新社が主催しており、書店員、書評家、新聞記者らの投票で決定。また、各新書の編集長が票を入れる際には、自社の新書を避けることになっている。2008年度からスタート、第1回は福岡伸一(ふくおか・しんいち)氏の『生物と無生物のあいだ』が受賞した。養老孟司(ようろう・たけし)氏の『バカの壁』(2003年初版、新潮新書)が400万部を突破するなど、複数のベストセラーが注目を浴び、出版界に「新書強し」を印象づけた2005年ごろからの勢いが背景となっている。
2013年度は、阿川佐和子(あがわ・さわこ)氏の『聞く力』 (文春新書) 、早野透(はやの・とおる)氏の『田中角栄』 (中公新書) などを抑えて、小熊英二(おぐま・えいじ)氏の『社会を変えるには』 (講談社現代新書) が「最高の一冊」に選ばれた。新書にしては束(つか)があって値段も張る(1365円、税込)。その内容はともかく、忙しい現代人が気軽に「知」を得られる「新書」というものの本分からは、いささかはずれているかもしれない?