民主主義国家では、身分や納税額、男女の性差で選挙権が差別されてはならない。日本国憲法14条も「法の下の平等」を規定している。その考えでいけば、「一人一票」の実現が望ましいわけだ。
いまこの問題が注目を集めているのは、「一票の格差」が最大2.43倍だった昨年12月の衆院選をめぐり、各地の高裁が、格差是正を迫る厳しい判断をそろって示したからだ。弁護士グループが選挙無効を求めて全国の高裁・支部に起こした16件の訴訟のことだ。内訳は、「違憲状態」2件、「違憲だが選挙自体は有効」12件、「違憲、無効」が2件。「無効」は、選挙のやり直しを求めた、ということだ。
一連の判決で高裁が問題視しているのは、国会の怠慢だ。2009年衆院選を「違憲状態」と断じた最高裁判決(2011年)について、国会は、昨年の衆院選まで抜本的な是正を行なわず、そのまま選挙に突入したためだ。
最高裁判決は、衆院小選挙区300議席のうち、47各都道府県に1議席を配分し、人口に比例して残りの253議席を割り振る「1人別枠方式」の廃止を求めたが、国会は具体的な対応をしていない。やっと取り組み始めた議席の「0増5減」は、弥縫(びほう)策でしかない。
16件の高裁判決はいずれも上告されたが、最高裁はどんな最終判断を下すのか。党利党略で国会が是正に動かないなら最高裁はバッサリと断じるべきだ。判決は年内にも行なわれるという。