怪しげな来訪者が商品を売りつけてくる「押し売り」。「押し買い」はその逆だ。高齢者などの家に狙いを定め、貴金属のたぐいを強引に買い取る。しかも相手がよく考える隙も与えずに、買値は捨て値に等しい。背景には金の価格の高騰という「事実」がある。嘘つきは話の中に本当のことを混ぜてくるので、油断は禁物なのだ。もし疑問を感じても、いつまでも帰らずに「押し」てくるので、やがて怖くなって示された額をのんでしまうという。
こうした消費者の被害を受け、2013年2月より改正特定商取引法が施行された。業者が依頼を受けずに飛び込み訪問することは禁止され、買い取りに際して書面の交付も義務化されている。さらに、これまで訪問「販売」に当たらないとしてできなかったクーリングオフ(契約8日以内の解約)が適用されることは大きい。大切なアクセサリーを奪ったあげく、「もう溶かしてしまった」「転売した」などと返す手口はいちおう封じられることになる。
なお今回の規制では、これまで表だった被害のない大型家電や家具、中古の流通が盛んな自動車や本などははずされた。特に中古車はトラブルが多いので、規制に含めるべきでは、という意見もある。