成長戦略の柱に医療を掲げる安倍政権だが、その司令塔として位置づけているのが、「日本版NIH」だ。モデルは、米国立衛生研究所(National Institutes of Health)。
報道された政府原案によると、日本版NIHは内閣府所管の独立行政法人として設置する。再生医療や遺伝子治療といった重点テーマを設定し、それぞれにプロジェクトを発足させる。プロジェクトには、行政機関だけでなく企業や大学も加わり、「産学官」で研究・開発を進める。各省バラバラだった研究開発予算(約3500億円)も一元的に管理し、民間からの資金も募り、基金化する。トップは民間人を起用する方向という。
4月19日に都内で、日本版NIHの設置構想を明らかにした安倍晋三総理は、その狙いと自らの役割について、「官民一体となって、研究から実用化までを一気通貫でつなぐことで、再生医療・創薬など最新の医療技術の新たな地平を、私が先頭に立って切り開いてまいります」と強調した。潰瘍性大腸炎という難病にかかり、一度は総理の座を投げ出した安倍総理は、画期的な新薬が日本で販売されたことで総理再登板が可能となった。それだけに、日本版NIHへの思い入れも強いという。
政府は日本版NIHについて、2014年度中の設置を目指し、秋の臨時国会に関連法案を提出する。「医療を成長戦略の柱に」が単なるお題目に終わらないようにしてほしい。