ちりめんじゃこと山椒の実の煮たものを混ぜ合わせたり、一緒に炊き合わせたりしたものである。ごはんにまぶして食べるもよし、濃いめのお茶でお茶漬けにすれば、夏の朝など、ほかになにもなくても十分しあわせな気持ちになれる。京都を代表するおみやげであり、一般に手作りされる家庭料理でもある。ちりめん山椒なら町一番、という料理上手なおばさまが、近所に必ずおられるのが京都の常識で、なくしたくない民俗遺産の筆頭である。
「ちりめんじゃこ」とは「ちりめん」ともいい、カタクチイワシのしらす干しのことである。ちりめん山椒にするなら、おなかに赤い子をもっている「赤はら」を選ぶのがよい。調理するときは「ちりめん」がよく乾いていることを確認し、厚手の鍋に材料を入れ、淡口(うすくち)醤油を7分目ぐらいまで加え、ゆっくりと炊きあげる。隠し味には砂糖や酒を少々。さらに、色づけとして濃口(こいくち)醤油を少々。最後に、煮ておいた山椒の実と混ぜ合わせる。山椒の実は別に淡口醤油で炊いておくと、これはこれで、ちょっとした薬味やふりかけの代わりにもなって重宝する。
京都でもっともなじみ深い香味料である山椒は、庭の片隅で育てている人が多い。自生させておけば、山椒ほど便利な香味料はなく、早春には「木の芽」として葉を使い、春には「花山椒」、初夏には「実山椒」としてちりめん山椒に使える。さらに、秋になってできる黒い実は、擂(す)れば粉山椒となり、ほぼ1年を通して楽しむことができる。