通勤手段の一つとして、都会で自転車の人気が高まっている。自宅とオフィスの間を電車で往復するだけの毎日は、運動不足に陥りがちだ。日々の自転車通勤は健康的であり、季節の移ろいを感じながら走るのは精神衛生上もよい。実際、入り組んだ都市を抜けていくのに自転車はうってつけだし、環境に対する悪影響も少ないエコなツールであろう。さまざまなメリットがあるので、「自転車ツーキニスト」の増加も当然。また東日本大震災以来、帰宅の足を失った体験が自転車への関心を高めたともいわれている。
こうした状況を受けて、スーツメーカー各社が自転車通勤用の工夫をこらした新商品を送り出している。マストなポイントは、姿勢が前に傾くスポーツタイプの自転車でも気にならない「伸縮性」と、突然の雨に対応した「撥水(はっすい)加工」。結果的に、それまでのスーツの弱点そのものをカバーすることにもなった。紳士服大手・AOKIの「LES MUES(レミュー) バイクライン」は、上着の裾が風でめくれる対策として固定しておくボタンや、夜間運転に配慮した衿裏の反射テープなどの機能が好評。こうした各社の競合状態での知恵が、健康的で自由なライフスタイルをますます推し進めそうだ。