地域をかぎって首相主導で大胆な規制緩和、税制優遇に取り組む施策。政府はこれを「成長戦略」の柱に位置づけており、別名「アベノミクス戦略特区」とも呼ばれる。創設を強く唱えたのは竹中平蔵慶應大学教授だ。
3大都市圏を中心に推進し、甘利明(あまり・あきら)経済財政・再生大臣は「認定する特区は3、4か所に絞り込む」としている。
規制緩和や減税で国際競争力を高めて企業誘致を進め、安倍首相は特区を「世界一ビジネスをしやすい事業環境にする」という。
竹中氏が示した特区の事例は、「イノベーション特区で、法人税の大幅引き下げ」(大阪)、「外国人医師の国内診療行為の容認」(東京)、「都営交通の24時間化」(同)、「海外トップクラスの学校誘致」(同)、「公道での車の自動走行実験」(愛知)など。なかにはカジノ解禁をにらんだのか「統合型リゾート」(東京)といった構想もある。
ただその実現性となると高い壁が立ちはだかる。既得権益を持つ業界団体や省庁の抵抗だ。「構造改革特区」など従来の特区制度も抵抗の壁に阻まれて思うように進まなかった経緯もある。また地方からは「地方切り捨て、都市部への一極集中になる」と反発する声も出てきそうだ。
今のところ、勢いのある安倍政権だが、ひとたび陰りが生じると、「国家戦略特区」は批判の大合唱になりかねない。そんな危険性もはらんでいる。