映画ファンとは自称しつつも、テレビやレンタルを中心に楽しんでいる人は多いだろう。劇場に足を運ばせる理由づけとして、「3D映画」に期待が寄せられたのはほんの数年前のこと。実際、2009年12月公開の映画『アバター』は驚きの映像体験として迎えられた。ところが、現在の興収の要である邦画においては、題材的にも演出的にも、どうも3Dがそぐわない。いまや3Dは、ハリウッドのアクション大作を楽しむだけの趣向といえる。……だが逆に言えば、洋画を楽しむ趣向としてはまずまず機能しているのではないか。
2013年4月、名古屋の複合娯楽施設「中川コロナワールド」に、3Dならぬ「4Dシアター」が誕生した。韓国のCJ 4D PLEX社が開発したシステム「4DX」を日本で初めて導入したもので、映画のシーンに合わせて、座席が動いたり、揺れたりする。海のシーンで風やミストが吹き出したり、美女の登場シーンで甘い香りをただよわせるといった凝ったギミックも加えられる。まるで映画館ではなくテーマパークのようだと皮肉る意見もあるが、それはまさに狙っているところだろう。自宅にひきこもった映画好きを、劇場に連れてくることがひとまず4Dの責務である。『アイアンマン3』で始まった中川コロナでの上映の評判は、決して悪くないようだ。海外で公開された『タイタニック』4DX版も業界内では話題になった。あとは、4DXに向いたコンテンツがどれだけ生まれるかが注視される。