「若いのに働かない怠け者」。
ニートに対して、そんなイメージを持っている人も多いのではないだろうか。ニート(NEET)は、not in education, employment or trainingの略語で、日本では15~34歳の非労働人口のうち家事や通学をしていない人と定義づけられている。
とかく、「わがまま」の一言で片づけられがちだが、厚生労働省の「ニートの状態にある若年者の実態及び支援策に関する調査研究報告書」(平成19年度)を読むと、そのイメージは覆される。
「社会や人から感謝される仕事がしたい」と答えた人は82.5%、「仕事を生きがいとしたい」と答えた人は68.7%。彼らは、仕事に対して前向きに考えていることがわかる。その一方で、「知らない人に話しかけるのが苦手」と答えた人が59.6%、「面接で質問に答えるのが苦手」と答えた人が64.8%で、他者とのコミュニケーションを苦手とする傾向もある。
つまり、就労意欲はあるのに、コミュニケーション能力が低かったり、精神的な弱さが障害となって、なかなか仕事に就けないのがニートの実態なのだ。
そこで、これまでのイメージを覆すために、ニートの中でも就労意欲があって行動している若者の呼称として、大阪府にあるNPO法人などが提唱しているのが「レイブル」だ。
欧米諸国では高等教育の卒業後に就職せずに、ボランティア活動などの経験をする若者を「レイトブルーマー(late bloomer)」と呼ぶ。「遅咲き」「大器晩成」の意味だが、レイブルはこれにちなんで作られた造語だ。
大阪府では、こうしたレイブルに対して、府内10社の企業と連携して、職業体験できる場を提供したりして就労支援を行なっている。
2011年の調査では、ニートは全国で60万人にも及ぶという。少子高齢化が進み、社会の支え手がますます必要になるのに、60万人もの若者が労働市場に参加できない現状を放置しておくことは大きな損失だ。
また、人が生きていくうえでも、「働く」ことは自分が社会に必要とされていることを実感できて、自己承認を得やすいものだ。働くことで満足を得られれば、それが自信につながり豊かな人生を送ることも可能になる。
国も「地域若者サポートステーション」を設けて、若者の就労支援を行なっている。だが、さまざまな困難を抱え、社会から排除された若者を包みこみ、いかに面倒をみていくのか。大阪府の取り組みのように、私たちの社会はいま、試されている。