梅雨の晴れ間に襖や障子を片付け、代わりに夏用の建具と入れ替えることをいう。模様替えや建て替えともいわれる。建具替えとともに、きものは単衣(ひとえ)から絽縮緬(ろちりめん)などのうすものを着た人を見かけるようになり、普段でも着ながしや浴衣の涼しげな装いが増えてくる。衣服も、家の装いも、夏向けにがらりと趣を替えると、あとは祇園祭を待つばかりである。宵山などへ出かけるならば、京都の夏しつらえも楽しんでいただきたい。
京都の夏はとにかく蒸し暑いので、少しでも暑気をはらって見た目にも涼しく、建具には御簾(みす)をかけたり、簾戸(すど)を入れたりするのが京都流の粋である。御簾とは薄い竹で編んだ簾(すだれ)の一種。簾戸は昔風の網戸のことで、葦(よし)障子ともいわれている。葦の簾を障子の枠にはめ込んだもので、とても風通しがよくなる。座敷を涼しくする夏の小道具にはいろいろあって、たばこ盆、団扇、風鈴、夏座布団、寝ござといったあたりが定番といえよう。畳の上には籐(とう)で編んだ網代(あじろ)の敷物を敷くのがいい。油をすり込んだ和紙を幾重にも重ね張りしてつくる、床材のような敷物の油団(ゆとん)で涼やかに過ごしてみたいものだが、最近では入手が難しいうえに高価なので、今のところ憧れの的といったところ。
このような夏のしつらいは、多少残暑が長くても、9月の終わりにはもとに戻す。大きな屋敷には建具替え専用の蔵や屋根裏が用意してあり、大工に建具替えを依頼する人も少なくない。
夏敷物の油団をつくっているところ。和紙を一枚ずつ重ねて貼り合わせながら、刷毛で強く打つことで、厚い一枚の紙=敷物をつくっていく。表面に荏油を塗ると完成である。毎年、水拭きしながら使っていると、徐々に飴色の風格のある表情に変わっていく。